2018 Fiscal Year Research-status Report
労働法における企業パラダイム――ネットワーク化のなかでの再生の可能性
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18K01295
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 昌浩 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50253943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 企業ネットワーク / 雇用によらない働き方 / 公正処遇 / 技能形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における具体的な検討課題は3点存在する。①企業パラダイムが日本の戦後労働法理論で果たした役割、②企業の組織変動やグループ化における企業パラダイムの変貌、③企業のネットワーク化における労働者保護と集団的参加の仕組みである。初年度である今年度は①と②を中心に検討を行った。①については労働者間の公正処遇に関する理論と判例実務の検討を中心的に行った。②については被支配会社従業員の雇用・処遇に対する支配会社の法的責任(雇用責任、損害賠償責任)に関する最近の裁判例の検討を行った。支配会社の被支配会社それ自体に対する支配力に着目するのではなく、支配会社と被支配会社従業員との間に労働契約関係に類似する関係がみられるか、あるいは直接に債務負担をしたといえるかが法的基準となる傾向が強固にみられる点が確認できた。 雇用と企業組織によらない働き方に関する政策動向についても総論的検討を行った。とくに雇用対策法(1966年)制定時には、不完全就業が失業に先行する克服すべき課題とされていたこと、労働参加率の向上と労働生産性の向上(両者は矛盾しうる)を旗印とする働き方改革関連法(2018年)制定のなかでの雇用対策法改正(労働施策総合推進法へ)では、「1つの」「企業での」「雇用」を前提しない働き方の推進が国の取り組むべき施策として組み込まれたが、不完全就業問題の本格的な再来が懸念されることを指摘した。さらに、企業組織に従来期待されていた労働者の技能形成に関する今後の法的課題について、職業能力開発促進法の歴史的検討を踏まえて素描することができた。 外国法研究については、日本労働法学会でフランスの労働法改革の動向に関するワークショップを開催し、その準備のためにフランスでの調査も前倒しで行ったが、フランスにおける「企業の自律的規制」に関する理論と実務の動向についての検討は、次年度以降に残された課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業パラダイムに関する理論や判例動向の検討が進んだ。フランスを中心とする理論と実務の動向に着手したが、その本格的な検討は次年度以降の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き企業パラダイムの変容にかかわる裁判例を中心とする実務の動向をフォローする。フランスでの現下の労働法改革と企業パラダイムに関する検討を進めつつ、企業のネットワーク化における労働者保護と集団的参加の仕組みづくりのための着眼点を得るようにする。
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Causes of Carryover |
108円の残額では執行ができなかったため。
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Research Products
(11 results)
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[Book] 戦後労働立法史2018
Author(s)
島田陽一・菊池馨実・竹内(奥野)寿【編】
Total Pages
711(内、執筆部分:46[475-520])
Publisher
旬報社
ISBN
9784845115556