2019 Fiscal Year Research-status Report
卸電力市場における流動性と健全性の確保に関する研究
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18K01296
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 邦宣 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00305674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エネルギー産業 / ガス市場 / 競争政策 / システム改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー市場のうち、ガス市場について、現在進行中の改革をまとめるとともに、今後の検討課題を示した。具体的な研究内容の概要を記すならば、次のとおりである。 2017年4月に、都市ガス小売市場の全面自由化が実施された。先行する電力小売市場と比較して、その成果にかかる評価は分かれる。しかしいずれにせよこれでガス市場改革が完遂というわけではない。昨年公表された競争的な電力・ガス市場研究会の中間論点整理は、小売市場の長期契約が市場閉鎖効果をもたらしていると指摘し、規制改革実施計画は、熱量バンド制への移行、一括受ガス制度の導入、LNG基地のさらなる開放、新たな卸供給制度の導入など、ガス市場のさらなる競争活性化策について検討を指示する。 今年度の研究では、それらのうち小売市場および卸市場における5つの論点について、競争政策の視点から、検討を行った。すなわち、小売市場における長期契約のあり方、一括受ガス制度を巡る議論から明らかとなった競争促進と消費者の選択肢確保との関係、卸市場におけるLNG基地開放を進める際の留意点、新たな卸供給制度導入における具体的論点、そして系列取引にかかる規制のあり方の、5つの論点である。 ガス小売市場は地理的に分断され多様である。また他のエネルギーとの競争から複雑でもある。多様・複雑な競争環境において改革を遂行するに際しては、消費者への影響を基準とした競争法的思考が有用であることが示し得たと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに電力市場における相場操縦規制について、成果を示す事ができたとともに、本年度は、さらにガス市場についての規制改革状況についての検討まで、研究対象を拡大できたからである。ガス市場についても、取引所設立の議論があるところ、電力市場とともにガス市場における規制改革を検討課題に加えることにより、さらに研究内容を充実させることができるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
電力、ガス市場いずれについても目配りができている。卸電力市場は、スポット、時間前、容量、需給調整と市場の範囲を拡大しており、それらの健全性を確保する必要性はさらに大きなものになっている。卸電力市場における流動性と健全性の確保のあり方を検討する本研究の最終年度として、これまでの研究をまとめ、電力市場そして設立について立法的議論のあるガス市場について、それぞれ卸取引所の規律のあり方について、提言を行いたい。 さらに、卸市場の流動性確保の最も有力な手段であり、電力・ガス市場の統合、相互参入について検討を行い、最終年度の研究成果としたい。これら相互参入が公正かつ自由に進展することで、近い将来、総合エネルギー市場の創出が期待されるところである。しかし、両市場の相互参入には難易において非対称性が存在するのではないかとの懸念も残る。すなわち、電力会社がガス小売市場に参入することは比較的容易であるのに対して、ガス会社が電力小売市場に参入することは比較的困難であることはないか。最終年度としての研究として、1)電力市場とガス市場間の総合参入にかかる難易度の非対称性と、2)それを前提とした競争減殺行為の規制のあり方について、包括的に検討する。 特に、2)について、総合参入が実現された電力・ガス市場なる総合エネルギー市場での競争には、電力事業者とガス事業者間に自ずと競争条件の非対称性が存在し、公正な競争条件の確保について注意が必要に思われる。最も懸念される問題は、電力市場における力を利用した電力・ガス市場における競争減殺行為であり、また、同レバレッジの前提となる電力市場における市場支配力維持を目的とした競争減殺行為である。前者の例はバンドリングであり、後者の例は、ベースロード市場における力の不当利用であり、また送配電部門からの情報を利用した小売市場での競争者排除である。
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