2020 Fiscal Year Annual Research Report
Liquidity and Fairness in the Energy Market
Project/Area Number |
18K01296
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 邦宣 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00305674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 卸電力取引所 / 相場操縦 / エネルギー市場 / 経済法 |
Outline of Annual Research Achievements |
電力システム改革は、垂直統合企業による独占的供給から、事業者が多数参加する卸電力取引所を利用した競争的供給へと市場構造を変化させる。同改革の成功には、卸電力取引所の「流動性」と「健全性」を確保する必要がある。本研究は、流動性確保の施策として、供給側の競争促進策、需要側の競争促進策のあり方を検討し、健全性確保の施策として、入札制度のあり方、不公正取引の規制基準を検討した。わが国では未検討のテーマであるが、米国にはFERC、CFTC、SEC、FTCによる実務と、それら実務を対象とした研究の蓄積がある。またEUでも2011年よりREMITが施行されている。本研究は、比較法研究により、システム改革の柱としての卸電力取引所の流動性と健全性の確保のあり方を解明した。研究計画に沿って、武田邦宣=松尾健一「卸電力市場における相場操縦の規制」(『エネルギー産業の法・政策・実務』所収)を公表した。米国法およびEU法の研究からは、詐欺的基準と人為的価格基準の収斂と、それを超えた制度の不当利用基準の存在を確認できた。結論をまとめると次のとおりとなる。すなわち、米国では、金融商品取引規制等での先例を基礎に、卸電力市場における規制が構築された。そして、詐欺的基準と人為的価格基準は、取引的詐欺として、それ自体では経済合理性のない取引を規制する場合を問題にするとの収斂が見られる。EUでは、人為的価格基準について、相場への有意な影響が確認された場合には、当事会社が正当化理由を示すことがない限り、要件の充足が認められる点に注目できる。もっとも、卸電力市場については、これら証券市場規制から継受した詐欺的基準と人為的価格基準の収斂を超えて、制度の不当利用との考え方が重要な規制原理として機能することに注目できる。卸電力については、市場参加者の経済合理的判断のみでその機能が確保されるとは考えられていないのである。
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Research Products
(1 results)