2019 Fiscal Year Research-status Report
集団的労働関係法上の権利を通じた個別的労働関係法上の権利義務の段階的実効と設定
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18K01298
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新屋敷 恵美子 九州大学, 法学研究院, 准教授 (90610808)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強行法規 / 合意 / 就労をめぐる時間の多様化 / 契約内容の断片化 / 労働法規制と契約解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の目的に照らして、イギリス労働法において、個別的労働関係法に位置づけられる制定法上の権利につき、特に近年注目される動向の有無とその内容につき研究を行った。 その結果、イギリスでは、近年、個別的労働関係法上の「労働者(worker)」に該当する者ないし該当すると主張する自営業者(self-employed)について、賃金からの違法な控除を受けない権利(1996年雇用権法13条)、1998年労働時間規則中の年次有給休暇の権利(同法13条)と休暇に対する手当の権利、そして、1998年全国最低賃金法の適用をめぐる紛争が多く現れていることが分かった。 そこで、本年度の前半は、イギリス労働法における賃金からの違法な控除を受けない権利について、制度と近時の判例を検討し、現在の文脈においていかなる点が紛争として現れてきているのか、そして、制定法上の権利と当事者の合意との関係性を明らかにした。この研究の成果を、法政研究(九州大学)において公表した。 つぎに、本年度の後半においては、イギリスにおける就労をめぐる時間の多様化(とりわけ、「ゼロ時間契約」の広がりとその基礎となる取り決めの)の中で、契約成立だけでなく、契約内容の断片化がすすめられていることを明らかにした。そのような断片化をもたらす新たな就労形態ないし複数当事者間の取り決め又は契約が、既存の労働法規制の仕組みにうまく合致せずに、問題を生じさせつつあることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初から問題が析出できるかもしれないと期待していたイギリス労働法の範囲で、本研究の考察対象として適切な最新の判例を入手できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス感染拡大の影響で、予定していたイギリスでのインタヴューを延期せざるを得なかったが、既に調査対象とは十分な連絡を行っていることから、2020年度はより実態的な調査を行い、理論構築の方向性を確認したり、展望を具体化したいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大の影響で、3月に予定していたイギリス調査をキャンセルしたため、来年度に使用することにした。来年度に、イギリス調査を可能であれば2度実施する。
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