2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of the problem of the labor law around the crowdworkers in China
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18K01299
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 昇 九州大学, 法学研究院, 教授 (60352118)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラットフォーム就労者 / 新型コロナウイルス / 中国 / 雇用調整助成金 / 労働紛争解決手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、中国におけるクラウドソーシングやプラットフォームビジネス就労者の実情について情報収集を行い、①労働時間と②報酬支払、③解約に関するルール、④紛争解決手続について、研究を行うことを予定していたが、引き続き、基本的には文献研究が中心となり、中国の実態把握が必ずしも十分にはできなかった。それでも、中国において、プラットフォーム就労者に関する裁判例や政策に動きが出てきたことから、これらについて研究を行い、「中国のプラットフォームビジネスと就労者」(労働法学研究会報2758号4頁)としてまとめた。 日本の状況についても研究を進めたが、例えば、コロナ禍での雇用調整助成金の申請をしないまま行われた整理解雇について、解雇を無効とした事案を検討した(「雇用調整助成金を申請せずに行われた有期契約労働者に対する整理解雇の有効性」(やまぐちの労働661号6頁))。また、時間外労働規制としての割増賃金に関しては、歩合給に相当する計算額から時間外労働手当相当額を控除する方式の適法性が認められた裁判例を検討した(「出来高等で算出される手当から時間外労働手当等を控除する賃金規定の有効性」(社会保険労務士ふくおか161号20頁))。運送業においては、労働者に関する規制を厳格化すればするほど、雇用から請負へのフリーランス化を促す側面がある。さらに、労働紛争解決手続について、「個別労働紛争解決手続きを考える」(労働法律旬報1993号4頁)において、近年の変化を簡単にではあるが、論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の問題は、結果として、プラットフォームビジネスの拡大を後押しし、フリーランス就労の広がりとその課題を浮き彫りにした。日本においても、労災保険の特別加入など、具体的な法政策の動きにもつながっている。また、関連する裁判例もみられるようになってきており、実態的な研究も進めることができた。日本法の研究は、①労働時間と②報酬支払、③解約に関するルール、④紛争解決手続について、一定程度、プラットフォーム就労者を意識した研究が進捗している。 他方で、中国に渡航して実態調査を行うことは難しいものの、文献研究などを通じて、新型コロナウイルス感染症の課題がある中で、中国が、拡大するクラウドワークについて、どのように対応しているかの検討を進めることができた。すなわち、中国でもプラットフォームを介した配達サービスの就労者が、労働法に基づく最低賃金や時間外労働手当を請求する裁判例があり、当該就労者が「労働者」に当たるかが問題となり、従属性基準により判断され、労働者性を否定するものがある。これに対して、通達を通じて、最低賃金水準の保障などが要請されるようになってきている。 本来は、今年度を最終年度として、研究をまとめる予定であったが、中国での実態の把握が不十分であったことから、補助事業期間延長承認申請を行い、2022年度まで研究を行うこととなった。 以上の通り、補助期間の延長を行い、中国法の研究を進めていく必要があるものの、文献研究を通じて一定程度の研究を進めることができた。また、日本法についても研究の進捗が認められる。他方で、東アジア(韓国、台湾等)への研究の拡大の可能性を探る点について、中国法と同様の問題から、必ずしも十分な検討が進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の計画では、2022年度までとしていたが、新型コロナウイルス感染症の問題から、中国での現地調査などが十分にできず、そのため、研究期間を変更して補助期間の延長を行うこととした(承認を受けた)。1年の延長により、中国での調査が可能になれば、現地調査を行い、これが難しい場合は、文献研究により、実態を明らかにすることに努める。文献研究の場合は、文献に掲載された後に研究を行うことから、少し遅れて研究を遂行することになり、研究期間を1年延長することにより、実態調査等で明らかにできなかった中国におけるプラットフォームビジネスの就労者の問題の研究を進めていきたいと考えている。 また、東アジア(韓国、台湾等)への研究の拡大の可能性についても、延長期間において検討を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究の計画では、2022年度までとしていたが、新型コロナウイルス感染症の問題から、中国での現地調査などが十分にできず、そのため、研究期間を変更して補助期間の延長を行うこととした(承認を受けた)。 延長した1年間において、中国での現地調査の実施もしくは文献研究により、実態を明らかにすることに努める。研究機関の1年延長により、実態調査等で明らかにできなかった中国におけるプラットフォームビジネスの就労者の問題の研究を進めるとともに、東アジア(韓国、台湾等)への研究の拡大の可能性についても、延長期間において検討を進めたいと考えている。
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Research Products
(6 results)