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2019 Fiscal Year Research-status Report

捜査手続における民間事業者からの情報取得・利用の法的規律

Research Project

Project/Area Number 18K01312
Research InstitutionHitotsubashi University

Principal Investigator

緑 大輔  一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50389053)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywordsプライバシー / 第三者法理 / 強制処分法定主義 / 令状主義 / 法律の留保
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、アメリカ合衆国連邦最高裁判例の中から、第三者名義で被告人がレンタカーを使用していた事実から直ちに違法捜索を理由とした被告人の証拠排除の申立適格が否定されるわけではない旨が判断された事例(Bryd v. United States, 138 S.Ct. 1518 (2018))を研究し、その内容を公刊した。上記事実の下でのプライバシーの合理的な期待の有無を判断する要素を明らかにした。また、アメリカの憲法訴訟手続についての書籍を執筆する機会を得て、憲法・アメリカ法の研究者と司法府における法的制御についての知見を得ることができた。
加えて、台湾に渡航して、法務部、台北弁護士会、台北検察署等を訪問するとともに、訪問できなかった台北地方法院については、所属する裁判官に面会する機会を設けてもらい、民間事業者から捜査機関への情報提供の在り方、被疑者等の位置情報を通じた動静監視への立法的対応等についてインタヴュー調査を行った。前者について、現時点では、捜査機関が民間事業者に網羅的な情報を提出すること自体が稀であり、取得すべき情報を具体的に特定して提出を求めていることなどの事実を確認できた。また、後者については立法案が準備されており、その案の1つは通信傍受にかかる法律を基礎として検討していることや、ドイツの裁判官留保の観点が強いために、被疑事実との関連性がアメリカ的な令状主義ほどは深刻な形で問題にならないと認識されていることを確認できた。
他に、刑事訴訟法学と実務の関係について、プライバシーに関する近時の刑事訴訟法学の議論状況に触れつつ課題を示す論文を執筆し、公刊した。また、捜査法における明文規定の必要な場合がどのような場合なのか、その規律の密度の程度はどのように検討されるべきかについて、複数の研究者に私見を提示して意見交換を行い、公刊する準備をした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

(1)台湾におけるインタヴュー調査を予定通り実施し、(2)アメリカ合衆国連邦最高裁の判例分析を実施するとともに、連邦最高裁の憲法訴訟の実情を分析し、また、(3)立法府によるプライバシー保護のための法的制御の在り方と、刑事訴訟法学の対応状況について、法律の留保と強制処分法定主義の関係を検討する観点から、研究を進めた。(2)のアメリカの判例分析および憲法訴訟の実情については、今年度に研究成果を公刊することができた。また、(3)については今年度内に執筆を終えて、次年度春に刊行予定である。(3)においては、(1)の調査結果も反映されており、台湾法の考え方が着想を大きく支えている。また、(3)の一部については、研究成果の一部を公刊した。
他方で、アメリカの一部学説の分析を踏まえた上での、プライバシーの理解についての包括的検討については、なお次年度に課題を一部先送りして、研究を進めることになった。
以上のことを勘案して、概ね順調に進展していると考える。

Strategy for Future Research Activity

今後は、日本およびアメリカ合衆国、台湾のプライバシーに関する理解を整理し、本研究課題であるところの、民間事業者から捜査機関が情報提供を受ける際の法的な規律の在り方を提示する作業に入る。
新型コロナウイルスの流行が拡大し、今後、海外渡航を伴う調査を実施できるか否かは不透明である。そのため、アメリカ合衆国および台湾への渡航調査については、課題となる。今後の状況が流動的であり、海外に渡航しての調査を実現できない可能性も充分にありうることに鑑みて、基本的には文献調査またはオンラインでのインタヴュー調査に切り替えることを適宜検討する。
また、代替として、国内のプライバシーにかかわる諸問題に精通する研究者・実務家との意見交換の機会を活用することを検討する。国内の研究者・実務家との意見交換についても、新型コロナウイルスの流行に伴い、困難を伴う場合があることが予想されるが、オンラインでの会合を実施するなどして対応することを検討する。

Causes of Carryover

洋書等書籍を発注していたところ、期間内に届かなかったこと等が主たる理由である。次年度には、残額についても執行できる予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2020 2019

All Journal Article (3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 捜査法における明文規定の必要性とその規律の密度2020

    • Author(s)
      緑大輔
    • Journal Title

      犯罪と刑罰

      Volume: 29 Pages: 25-47

  • [Journal Article] 第三者名義で被告人がレンタカーを使用していた事実から直ちに違法捜索を理由とした被告人の証拠排除の申立適格が否定されるわけではないと判断された事例――Bryd v. United States, 138 S.Ct. 1518 (2018)2019

    • Author(s)
      緑大輔
    • Journal Title

      判例時報

      Volume: 2399 Pages: 127-128

  • [Journal Article] 刑事訴訟法学と実務――刑事訴訟法学の「守備範囲」をめぐって2019

    • Author(s)
      緑大輔
    • Journal Title

      法律時報

      Volume: 91-9 Pages: 50-55

  • [Book] アメリカの憲法訴訟手続2020

    • Author(s)
      大林啓吾編、會澤恒、小林祐紀、髙橋脩一、菅谷麻衣、緑大輔、御幸聖樹、今井健太郎、小池洋平、吉川智志
    • Total Pages
      384
    • Publisher
      成文堂
    • ISBN
      978-4-7923-0655-7

URL: 

Published: 2021-01-27  

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