2019 Fiscal Year Research-status Report
再犯防止に心理学を活用するための実践的研究:絆を築く力を伸ばす司法心理士の育成
Project/Area Number |
18K01314
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤岡 淳子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (10346223)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂東 希 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60388626)
毛利 真弓 同志社大学, 心理学部, 准教授 (70780716)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 研修 / 司法・犯罪心理学 / 再犯防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、再犯防止のために心理学を活用して、絆を築く力を伸ばしつつ非行少年・犯罪を行った人びとと関わる専門家を育成するための研修カリキュラムと教材を開発し、実際に18名の研修生を募集して、実施した。 研修は、月に1回日曜日に90分を3コマ実施し、5回行った。90分の授業を15コマ、大学で言うと、半期分に相当する内容とみなしている。シラバスは以下のとおりである。Ⅰ「司法・犯罪心理臨床の基礎」1司法心理学とは、2犯罪理論の動向、3新たな犯罪理論の動向、Ⅱ「動機づけとアセスメント」4変化への動機づけ、5アセスメントの基本、6初回面接の枠組み作り、Ⅲ「介入①~認知行動療法的アプローチ」7CBTアプローチの基本、8事例と介入プラン作成、9被害当事者の話を聞く、Ⅳ「介入②~グループ・アプローチ」10グループの基本、11グループの活用方法について、12加害当事者から学ぶ、Ⅴ「ネットワーキングと協働」13オープン・ダイアローグから考える、14チーム・コミュニティ作りの鍵となる概念について、15研修の振り返りと絆のワーク。参加者は、刑務所の心理・教育の専門職、保護観察所の社会復帰調整官、警察、更生保護施設、少年院職員、家庭裁判所調査官、児童相談所児童心理士、児童自立支援施設指導員、そして支援学校教員など幅広い専門職が参加し、顔の見えるネットワークを形成できたことも大きな成果と考えている。 加えて、渡米し、Seeking Safetyの実施に関わる研修を受講し、その内容と研修方法について学んだ。これは、嗜癖・嗜虐行動とトラウマ症状が併存する人びとに対する認知行動療法基盤の治療法であり、犯罪行動の機制と介入方法について実践的な知見を多く得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に実施する予定であった研修カリキュラムと教材を作成し、すでに実施した。そのプログラムにおいては、認知行動療法的アプローチとグループ・アプローチの中のリフレクティング・トーク、治療共同体アプローチ、当事者たちの回復運動という2つの柱があり、当初の計画とおり、絆を築くための専門職に必要な心理学の知見をまとめることができた。 とはいうものの、官民共同刑務所でのリフレクティング・トークの実施にまでは至らなかった。遠方であることの壁は大きかった。現在は、より近くにある女子の刑務所において、導入のための調整を行っている。 グループにおける動機づけ面接による動機づけも重要な知見・技能ではあるが、加害行動の背景にある長期・反復的ストレスやトラウマティック・ストレスの影響をさらに重視する必要性を鑑み、海外での研修は、Seeking Safetyに変更した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度実施した研修の教材と録画、アンケート結果を見直し、視聴覚教材も取り入れた研修教材を作成し、研修プログラムを完成させる。そのために現在、録画データとアンケート調査結果を見直し、検討している。年度内に報告書としてまとめる。 リフレクティング・トークないしは、絆を築く専門家育成のための研修を矯正施設職員に実施し、研修プログラムの改善を目指す。近畿圏内の女子刑務所と協働する予定で交渉中であるが、現在コロナ自粛のためストップしている状態である。これについては、今後のコロナの終息如何による。 本研究の成果を海外での学会報告あるいは日本での出版などにより公にしていく予定である。これについても、海外をはじめとして学会の開催についてはコロナ情勢によるところが大きい。
|
Causes of Carryover |
報告書印刷および配布費として20万円、研修実施の録画から視聴覚教材を作成する費用として50万円、共同研究者に各10万円。
|
Research Products
(8 results)