2021 Fiscal Year Annual Research Report
General theory of economic crime and its application
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18K01315
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
品田 智史 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (60542107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西内 康人 京都大学, 法学研究科, 准教授 (40437182)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 刑法 / 経済刑法 / 経済法 / 金融商品取引法 / 消費者法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済刑法の独自性という視角をもって経済刑法総論を構築し、それに基づき各則である各刑罰法規を検討することによって、その解釈・運用・立法に寄与するとともに、経済刑法に関する議論の更なる活性化を目的とするものである。研究最終年度である本年度は、主に以下のような研究を行った。 1.詐欺罪と背任罪に関する判例・学説の歴史的展開に関する研究成果を公表した。両罪について、判例実務は処罰範囲の適切な限界設定を試みようともしているが、その慎重さについては差異があるように見受けられ、両者の違いは、各犯罪の日常生活との近接性の違いが一因であるように解される。 2.いわゆる「商業賄賂」を素材に、公務員の賄賂規制と、私企業における賄賂規制の比較を行い、その成果を国際会議で報告した。長い伝統を持つ公務員の収賄処罰に対し、企業間の贈収賄の処罰は比較的新しい問題である。企業間の贈収賄は、競争の歪曲と企業内の義務違反の二つをその実態とするが、いずれも我が国では限定的にのみ刑罰の対象となり、とりわけ後者については、独占禁止法などによる非刑事的な規制が中心となっている。 3.財産犯の客体として特殊な性質を持つ金銭について、将来のデジタル決済制度規制を見据えた研究を行い、その成果を公表した。デジタル決済制度を悪用した横領類似行為が今後登場する見込みは高く、その当罰性は明らかであるが、現行の解釈論によっては横領罪による処罰は妥当とは言えず、立法による解決が望ましい。 4.詐欺とまでは評価できない消費者保護のための制度について、そのエンフォースを刑罰により行うべきか、非刑罰的手法によって行うべきかが問題となる。非刑罰的手段として近時重要な課徴金制度(景表法にある)について、刑事法学の観点から考察することが、経済刑法総論の構築にとって必要ではないかと考えるに至り、この点を、引き続く研究課題として設定した。
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