2018 Fiscal Year Research-status Report
目撃者遂行型調査による記憶の促進と誤記憶の抑制に関する研究
Project/Area Number |
18K01320
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松尾 加代 慶應義塾大学, 先導研究センター(三田), 研究員 (70726083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 大志 杏林大学, 保健学部, 講師 (80726084)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 目撃記憶 / 警察捜査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は(1)目撃者遂行型調査の効果の個人差(2)目撃者遂行型調査が記憶の再想起に及ぼす影響(3)目撃者遂行型調査によって想起される誤記憶の抑制について検討することである。平成30年度は、目的(1)の、目撃者遂行型調査の効果の個人差の検討を行った。個人特性のひとつである思考の仕方を取り上げ、大学生228名を対象に実験を実施した。 実験参加者は、思考の仕方を測定する言語化型ー視覚化型質問紙に回答をした後、架空の犯罪ビデオを視聴した。そして、ビデオ内の事件の目撃者という設定で、目撃者遂行型調査を使って目撃した内容を報告した。その際、目撃者遂行型調査に含まれている内容の順序を変更した変更版、または通常版のいずれかを用いた。通常の目撃者遂行型調査の最初のセクションは、事件全体に関して言語による報告が求められる。その後、事件現場に関してスケッチを通して報告が求められる。変更版ではセクションの順序を入れ替え、スケッチによる報告を言語による報告に先行させた。分析の結果、思考の仕方が言語化型の参加者は、通常版による記憶成績が変更版よりも良く、思考の仕方が視覚化型の参加者は変更版による記憶成績が通常版よりも良いことが示された。すなわち、思考化型の個人は、最初に言語による報告を行った場合のほうが、正しい記憶の想起量が多く、視覚化型の個人は、最初にスケッチによる報告を行った場合のほうが、正しい記憶の想起量が多くなることが示唆された。本研究の結果より、従来の目撃者遂行型調査の効果には個人差が見られる可能性があり、個人によっては、報告する順序を変更したほうが、多くの記憶が想起できるかもしれないことが示された。 本研究の結果を受けて、第2実験として、スケッチまたは文字による報告を最初に行うことが、記憶の保持および再想起におよぼす影響を検討する実験に着手した。本実験は、現在進行中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3カ年計画で4つの実験を計画していた。現在、当初の計画通り第2実験まで進んでおり、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、現在進行中の第2実験を完了させた後、その研究結果を受けて第3実験を実施する計画をしている。第3実験では、目撃者遂行型調査の特徴のひとつである「書く」ことに注目し、本研究の目的(2)の「目撃者遂行型調査が記憶の再想起に及ぼす影響」および(3)の「目撃者遂行型調査によって想起される誤記憶の抑制」の検討に進むことを計画している。
|
Causes of Carryover |
平成30年度は、実験参加者を大学生対象としたため、実験参加者に支払うの謝金の予算額と実際の支出額の間に差異が生じた。次年度は、本研究で得られた結果、および現在進行中の研究結果を複数の国際学会で発表する機会が得られるため、学会発表に必要な旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(8 results)