2018 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける重罪合意罪(謀議罪)及び犯罪結社罪・テロ結社罪の歴史的展開と現状
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18K01322
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
安達 光治 立命館大学, 法学部, 教授 (40348868)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テロ等準備罪 / 共謀罪 / ドイツ刑法 / 重罪合意罪 / 犯罪結社罪 / テロ結社罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、平成29年6月に組織的犯罪処罰法の改正によって「テロ等準備罪」が創設されたことを契機とする。本罪については、周知のとおり、実質は共謀罪であって、その拡大的な運用、適用により思想信条の自由や結社の自由等が侵害されるとの批判が強くある。このような批判に鑑み、本研究では、テロ等準備罪の限定解釈に関する手掛かりを見出すために、ドイツ刑法の重罪合意罪(30条2項)および犯罪結社罪・テロ結社罪(129条、129条a)につき、歴史的沿革、解釈問題および現状について検討を行うこととしている。共謀罪研究の「定番」ともいえる英米刑法ではなく、ドイツ刑法を対象とするのは、テロ等準備罪と同様に、合意された犯罪が実行された場合には処罰しないことが想定されていること、本罪が前提とする組織性と複数名による犯罪実行の合意の双方について処罰規定を持つこと、わが国の刑法学が伝統的にドイツ刑法をモデルにしてきたこと等に基づく。 平成30年度および平成31年(令和元年)度は、上記の犯罪に関する立法資料や論文、注釈書、教科書類の収集、分析に当たることとしていた。これに関し、平成30年12月には、フランクフルト大学への出張を実施し、資料収集に当たったほか、平成31年(令和元年)4月~9月に計画している当地での国外研究の打ち合わせを行った。現在、関連資料の収集、分析の作業をさらに進めているところであり、平成31年(令和元年)度中には、所属大学の紀要に成果を公表する計画である。これと併せて、平成30年度は5月に立命館大学でミュンヘン大学のヘルムート・ザッツガー教授によるヨーロッパ刑法の講演会を開催し、欧州のテロ対策の一端に触れる触れることができた。また、6月には、大阪弁護士会の公開学習会「共謀罪の適用を許さない!」において、弁護士および一般市民の方向けに「共謀罪の限定解釈に関する試論」と題する講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に計画していた歴史研究の部分に関しては、立法資料等の収集の点で若干の困難があることを除いて、収集、読解を進めてきている。研究計画調書記載のとおり、平成31年(令和元年)度は、4月より9月までの計画で、フランクフルト大学犯罪学・法哲学研究所(受入教員:クリストフ・ブルヒャルト教授)において国外研究を開始したところであり、10月からは、令和2年3月までの計画で立命館大学において学内研究が認められている。資料収集の点は、ドイツ滞在中に実施することが可能であり、学内研究において読解、分析に当たれることから、当初計画どおり、歴史研究の成果を公表できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたとおり、当初の計画どおり、平成31年4月よりフランクフルト大学において国外研究を開始している。現在は、関連資料の収集を中心に研究を実施しているが、それと並行して、とりわけ犯罪結社罪に関する現状につき、情報収集を行っている。ドイツでは、当該犯罪類型は、open door crimeと呼ばれており、警察・検察の捜査端緒として利用されることが多いとされる。そうした中、2019年4月に芸術家グループのリーダーに対し、犯罪結社罪の被疑事実で内偵捜査が行われていたとの報道があった(その後、捜査手続は打ち切られたようである)。今次の国外研究は、犯罪結社罪等の適用状況などに関する現状を調査することが主要な目的の一つであることから、この事件をはじめ、アクチュアルな情報を可能な限り収集する。その際、受入機関の指導教授から検察官等の実務家を紹介して頂くことになっており、そうした機会も活用したい。ドイツの現状に関しては、令和元年末を目途に公表論文にまとめる計画である。 歴史研究に関しては、これまで収集してきた資料の分析に加え、国外研究中に予定したものの収集を終えられるよう、作業を進める。収集した資料については、当初の計画通り、令和元年10月~3月に実施する立命館大学での学内研究において分析を進めることとする。
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Causes of Carryover |
ドイツ刑法関連文献について、新規で公刊されたものが想定より少なく、その購入金額が減少したことが主な理由である。次年度は、ドイツでの国外研究を実施することから、その際に文献の入手費用等に充てる計画とした。
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