2020 Fiscal Year Research-status Report
付調停の研究ーーー「付ADR」のための予備的考察として
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18K01333
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
西川 佳代 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (00276437)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ADR / ADR和解の執行力 / 民間型調停 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続き、我が国における調停制度の歴史、民間型ADRの展開について文献の調査・整理を行った。その結果,民間型調停のバリエーションが増加していること、そこにおける紛争処理を研究対象とすることがより一 層重要となっていることから,認証ADRにおいて行われている手続(web公開ベース)の分析や,具体的解決事例の収集・分析を行った。特に、一見すると認証ADRは同じようなプロセスを経て解決へと至る手続が明示されているものの、そこで使われている技法等に着目した場合、法的紛争解決を目指すものとそれ以外の紛争解決を目指すものとに別れていることが判明した。今後はこれら法的解決以外の解決のバリエーションやそれを導く手法の研究が必要と考えている。昨年度に引き続き手続主催者のインタビュー調査の必要性を認識しているが、海外調査も含め、コロナ禍のもと実現できていない。 また、ADR和解の執行力付与について、令和3年3月の「仲裁法等の改正に関する中間試案」や調停に関するシンガポール条約等の検討を進めた。ここでは、「執行合意」をADR和解のプロセスのどこで獲得すべきか、また、獲得可能か、という観点から分析により、「執行合意」自体をとることがADRの解決の豊潤さを減ずることになるのではないかと考えるに至った。例えば、手続の冒頭での説明は相手方の応諾率に影響しかねず、手続に入ったとしても内容的な和解合意の形成過程においては和解内容自体に影響を与えることが考えられる。結局のところ、執行可能性を追求した「明確な」法的解決にのみ拘泥することになりかねず、冒頭に述べた民間ADRの法的解決以外のものを求める価値が薄らぐ可能性があると考えられる。執行力の付与がADR過程自体、あるいは、ADR後のプロセスの活性化のために資するようにするためにはどのような制度設計が考えられるかが新たな課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画における海外調査が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載した海外におけるインタビュー調査が難しいため、メール等によるアンケートや質問等での代替を検討している。
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Causes of Carryover |
海外インタビュー調査が行えなかったことにより次年度使用額が生じた。本年度前半に実現の見込みがない場合には、メールやオンラインによるインタビュー調査を代替手段としたい。
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