2021 Fiscal Year Research-status Report
付調停の研究ーーー「付ADR」のための予備的考察として
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18K01333
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
西川 佳代 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (00276437)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ADR / 執行力 / シンガポール調停条約 / ADR和解 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は民間ADR和解の効力に執行力を付与すべきか、という点を中心に考察をすすめた。ADR和解への執行力付与については、ADR法施行前に検討されていたが結局実現しなかった。その後も議論は続いており、法務省のADR法に関する検討会においても論点として取り上げられるなどしていた。 他方、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)では国際商事調停の利用促進を目的として、ADRによる和解合意に執行力を付与する国際的な枠組みが検討され、今般、執行決定の枠組みを採用することで合意を得て、2018年に通称シンガポール調停条約として採択、2020年9月に発効した。現在の署名国は54、加盟国は6となり、国際的な枠組みとして急速に普及する可能性がある。 このシンガポール調停条約の発効を契機として、国内でもこの条約の枠組みを参照しつつ、改めて立法に向けた機運が生じているところであり、2020年秋から法務省法制審議会仲裁法制部会が開始され、仲裁法等の改正に関する中間試案が公表されるとともに、法務省ODR推進検討会においてもこの問題は議論されている。 このような状況において、中間試案で公表された枠組みが民間ADRに適用された場合、その和解プロセスにどのような影響があるのかを分析した。その結果、中間試案が参照した他の手続における「執行合意」の位置と民間ADRでのそれはかなり異なるため、執行合意を手続のどの段階でどのようにとるのかについては相当の困難が予想されること、また、ADRに現れる紛争の類型によっては、誰が債務者になるのか確実ではない場合もあり、このような場合に執行合意をとることは難しいと考えられること、そして、何よりも訴訟と異なる解決の可能性を持つADR和解のメリットがADR合意への執行力付与により減殺されることが懸念されるとの結論を得た。以上を仲裁ADR法学会のシンポジウムにて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、当初予定していたインタビューや海外出張が実現できていないことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長し、コロナの状況を見つつインタビュー調査等を行う。状況に応じてZoom等のリモート手段の利用を組み入れる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、インタビュー調査や海外調査ができなかったことによる。研究期間を1年延長し、翌年度はコロナの状況を見ながら調査を行う予定である。
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