2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K01334
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 教授 (00540155)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民法 / 相続 / 財産承継 / 夫婦財産制 / 信託 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来型の財産承継方法(被相続人による遺言、相続人による遺産分割)以外の方法によって財産承継がなされる場合に、その財産承継が、誰のアプローチによるもので、どのような機能を有するのかに着目しながら、日本法とフランス法での制度設計や基本的な考え方の相違を比較し、分析する研究を進めている。研究の成果全体として明らかなのは、円滑な財産承継及び相続紛争の予防のためには、相続のアレンジメント・プランニングをする方法を制度として「多層的に」用意しておくのが肝要だということである。 今年度とくに研究成果を得られたのは、夫婦財産制と相続との関連についてである。フランス法では、人の死亡を機とする財産承継方法として、夫婦財産制の役割が極めて大きい。夫婦財産契約の内容を工夫したり、贈与契約を組み込んだりすることで、夫婦のうちいずれが先に死亡しても、のこされた生存配偶者の生活が保障されたり、相続人との対立を回避したりすることが可能となる。その内容の一部については、関西大学法学研究所「相続と取引をめぐる変容」研究班主催の研究会において、「フランスにおける相続のしくみと紛争予防」と題する報告をした。 これに対し、日本法では、一方配偶者の死亡にあたって夫婦財産制が問題となることはなく、夫婦間の財産の清算は、配偶者の相続分・遺留分に一任されている。最近の裁判例では、配偶者の相続権・遺留分に、夫婦間の財産の清算の機能を含めてしまうことから生ずる具体的問題も明らかにされており(大阪高決令和2年2月27日判時2480号16 頁)、「配偶者の廃除事案における離婚事由の有無と夫婦間の財産の清算」新・判例解説Watch民法(家族法)No.130(文献番号 z18817009-00-041302145))において制度的な問題点を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フランス法に関する文献研究を進めることができた。研究会報告の場も得て、フランス法研究者との意見交換をすることもできた。新型コロナウイルスの感染拡大のため、フランス現地での調査が実現できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染状況をみながら、可能であれば、フランス現地での調査を実施する。現地調査が困難な場合には、リモートによる聞き取り調査が可能かどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、予定していた海外調査を実施できなかった。
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