2019 Fiscal Year Research-status Report
Economics of Contract and a Theory of Contractual Liability
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18K01339
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 顯治 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 教授 (50222378)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公共財 / 市民的公共性 / 放送法 / 情報準拠理論 / 意図的契約違反 / 取引的不法行為 / 超過損害賠償 / 政策的損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、契約法・不法行為法における「厚生と権利」という基本原理を基盤として理論的・各論的問題を検討する研究論文を公表した。 第一に、意図的な契約違反を故意不法行為と評価し、履行利益賠償を超える損害賠償(超過損害賠償)を認めるいわゆる意図的契約違反の法理を検討した研究論文を公表した。論稿の前半では、意図的契約違反の法理を新たな観点から検討する米国契約法学・不法行為法学理論(情報準拠理論)を紹介・検討した。後半では、米国における全州規模での保険金不払い事件であるCampbell v. State Farm事件を、情報準拠理論を踏まえて検討した。さらに、これらの検討が、わが国における消費者裁判手続特例法に対して有する含意を論じた。これにより、超過損害賠償には、①実質的には填補賠償に過ぎないものと、②履行利益を超える政策的損害賠償があることを明らかにし、①は、隠れた不履行による集団的被害の救済法理としてわが国においても重要な意味を持つこと、②は、社会的効率性の達成という政策目的に照らして課される政策的損害賠償であるところ、私法的損害賠償の基本原理に照らして疑問があることを論じた。 第二に、民事法上受信設備設置者とNHKとの受信契約に関する放送法64条1項を巡る法的性質が争われた最高裁29年12月6日大法廷判決に関する評釈を公表した。公共的事項を市民の熟議と公論の活性化を通じて決定してゆくにあたって公共放送は根幹となる役割を担うこと(市民的公共性、熟議民主主義)、また公共放送は非競合性と非排除性を特徴とする公共財であることを踏まえ64条1項は解釈されねばならないことを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研の支援により、従来の契約法理論、不法行為理論から一歩を進める新たな研究視覚・方法論に基づく研究論文を公表することができた。その後も着実に研究は進展しており、2020年度も地道に研究論文の形で研究成果を公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき、第三段階の研究に進む予定である。当初の研究計画を順調に消化しており、その成果も着実に研究論文の形に実を結んでいる。2020年度前半期は新型コロナウィルスにより大学が閉鎖される等、予想外の事態が生じているが、本科研開始以来の研究の蓄積に基づき、このような事態も乗りきりたいと考えている。手を緩めることなく、論稿の執筆を進める予定である。
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Research Products
(2 results)