2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on Private Enforcement by Substantive Law
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18K01342
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
楪 博行 白鴎大学, 法学部, 教授 (20331332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 修 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 名誉教授 (00170093)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クラス・アクション / 信託 / 証券 / 実体法 / 手続法 / 法実現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第1に昨年度研究で行ったアメリカの民事法領域における実体法の法実現過程にかかる歴史的検討を継続し、20世紀初頭から現在に至る法思想の影響を踏まえて検討した。19世紀末における過失による不法行為の出現に伴うコモン・ローの訴訟方式での令状の競合の問題は訴答へ手続を変化させることで対応した。20世紀初頭におけるプラグマティズムに源流を求められるリアリズム法学の影響を受け、現実に即した裁判所機能を重視した法思想構造が明らかになった。この段階で実体法の実現を裁判手続に委ねる現行のアメリカ法独特の法実現手段が生じたのである。歴史的に実体法を手段とした法実現を行う構造であったコモン・ローはこの段階で変化したのである。第2に信託法の手続および救済法的側面の検討を行った。大規模損害賠償事案での基金による救済方法を端緒にして、信託によりクラス・アクションが代替可能かである。英連邦とりわけイギリスでは社会保障の手段として信託を位置づける方法が顕著であるが、不法行為損害賠償の代替方法として信託は認識されていない。一方でアメリカでは大規模事故への救済を目的とした信託が行政により設定されている。信託を媒介とした公的法実現が図られているのである。第3に、証券関係法において歴史的にいかなる救済がなされてきたのかについて検討した。証券詐欺規制が法律事務所等の間接関与者をも対象とされてきたことが示されるとともに、この当該領域では私的法実現を公的機関が補助する構造が浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画が達成できたとともに、研究過程で現れた新規の研究対象に対して検討を加えることができた。また信託においては当初予定していたアメリカの状況のみならずイギリスのそれをも検討することができた。本年度は新型コロナの影響があり、海外での現地調査が不可能となった。しかし、研究の進捗状況は全体的におおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は研究最終年度に当たるため、過去3年間の研究成果を踏まえ、本課題研究である「実体法を手段とした私人による法実現の比較法的研究」の総括を行う。具体的には第1に、実体法である信託法と証券関係法が、私人による法実現に向けて手続法を事実上補完している理論的根拠を示す。第2に、クラス・アクションを代替することの可能性について一定の結論を導く。なお、過去2年間では新型コロナの影響を受け、そのために海外調査が不可能となった。海外の研究者との研究会はオンラインで開催したが、現地調査での必要な文献をすべて入手することができなかった。そこで可及的速やかに現地調査の可能性を模索し、代替措置を考慮しつつ可能な限り実行する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により海外調査が不可能となり、代替措置として書籍および資料の購入を行った。調査対象資料を年度内ですべて入手できなかったため、その残額が継続的に実行すべき次年度使用額になった。
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Research Products
(9 results)