2018 Fiscal Year Research-status Report
マンション区分所有法制の再構築-マンション法制の国際比較研究の成果を踏まえて-
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18K01347
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鎌野 邦樹 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (00204610)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 区分所有 / 区分所有法制 / マンション / マンション法制 / 区分所有建物 / 比較法 / マンション管理 / マンションの再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我が国の多くのマンションが、高経年化し、その居住者が高齢化するなかにあって、現実にどのような問題及び課題が生じているかを抽出し整理するとともに、これまで行ってきた諸外国の法制の調査研究の成果を踏まえて、我が国のマンション法制について、①管理についての適正かつ持続可能な制度、及び②再生について適正かつ円滑に促進するための制度を構築するために、学術的見地から法的提言を目的とするものであるが、本年度においては、当初の研究実施計画に従って調査研究を進め、次のような研究実績を得た。 (a)課題の抽出・整理 各種の文献、学会報告、管理実務担当者等へのヒアリング等の調査から、今日のマンションにおける最重要課題は、ソフト面では、①居住者の高齢化に伴う、理事のなり手不足・高齢者単身世帯・認知症居住者・空き住戸への対応であり、ハ-ド面では、②耐震工事未実施マンションへの対応、③マンションの長寿命化の促進、及び④マンションの再生(建替え・建物敷地売却)の適正かつ円滑な方法であることを明らかにした。 (b)比較法制研究 海外調査としては、単独の法典として世界で最初に区分所有法を制定したギリシャにて法律研究者数人、マンションに係る実務家(弁護士・公証人・建築家等)数か所にヒアリングをし、意見交換を行った。そこにおいては、特にわが国にも存在する小規模マンションの管理についての施策に関して有益な示唆を得た。また、オ-ストラリアからのマンションに係る実務家(弁護士、管理業者等)の訪日に際して意見交換を行った。さらに、わが国の共同研究者の協力を得て、ドイツ、フランス、ベルギ-、オ-ストラリア等の上記(a)に関する課題等について調査をした。 (c)我が国の法制に対する法的提言 著書、学術論文(後掲)、学会シンポジウム等において上記(a)に掲げた課題等について法的提言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度当初の研究実施計画の各項目(以下の(a)~(c))ごとの進捗状況は、次のとおりであり、おおむね順調に本研究を進展させている。。 (a)課題の抽出・整理 マンションをめぐる今日の問題や課題は多くある(区分所有者の管理に対する無関心、専有部分でのペット飼育や民泊をめぐる問題、上下階の騒音問題、管理費・修繕積立金の滞納、専有部分の賃貸化、区分所有者間のトラブル、管理組合と管理会社のトラブル等)が、マンションとその法制を持続的に維持・改善されるために最も重要な課題を上記のとおり明らかにすることができた。 (b)比較法研究 これまで日本において紹介が皆無であったギリシャの区分所有法制を紹介するとともに、日本の法制の改革を検討するにあたって参考とすべき事項について明らかにすることができた。その他、オ-ストラリア(ニュ-サウスウェイルズ州)法の議決権の行使、集会の定足数、及び再生(建替え・建物敷地売却)の各制度については今後の日本の法制を検討するにあたり有益である点を認識できた。その他、、フランス法、ベルギ-法、スイス法等にも同様に参考にすべき制度があることが明らかになった。 (c)我が国の法制に対する法的提言 上記の研究成果について、下記に掲げる論文等において発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の当初の研究実施計画の各項目(以下の(a)~(c))について、次のように調査研究を推進する予定である。 (a)抽出・整理した諸課題の掘下げ 前記「研究実績」で掲げた①~④の各課題について、さらに我が国の実態について調査し、また、比較法的観点から考察をする。 (b)比較法研究 本年度は、9月に、ドイツのベルリンとボ-フムにおいて、管理不全に陥った団地またはマンションの再生・解消に係る行政の取組みについて、区分所有者の権利との調整の観点から、国内外の共同研究者の協力の下で、この点に造詣の深い研究者や実務家、および事業を進めている行政担当者にヒアリングをするなどして調査研究を行う予定である。また、可能であれば、2020年3月に、ドイツおよびフランスにて、それぞれの法制を基礎づけ、また、それぞれの法制に基礎づけられているマンション管理の実態(具体的な管理組合および管理者(管理委託会社等)の活動等)についてヒアリング等の調査をする。 (c)我が国の法制に対する法的提言 2019年6月1日午後に、比較法学会(東北大学)のミニ・シンポジュウムA「区分所有法制の比較から日本のマンション管理および再生を考える」とのテ-マで、国内研究協力者である吉井啓子・明治大学教授(フランス・ベルギ-法)、藤巻梓・国士館大学教授(ドイツ・スイス法)、岡田康夫・東北学院大学教授(オ-ストラリア法)、カライスコス・アントニオス・京都大学准教授の協力を得て、アジア法(韓国・中国・台湾)の報告と共に、本企画のまとめをすることによって、本研究成果についての中間的な報告をする。また、11月には、消費者法学会(金沢)にて、「マンション法と消費者法」(仮題)とのタイトルで、本研究に関連する事項について報告をすることを予定している。
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Causes of Carryover |
1.次年度使用額が生じた理由 2018年の2月または3月に共同研究者との研究会を予定し、そのための共同研究者2名の旅費を予定していたが、急遽、共同研究者2名の都合がつかなくなったため、予定していた研究会を2019年4月に開催することになった。 2.翌年度分として請求した助成金と合わせた研究計画 次年度使用額は、2019年4月13日に開催した研究会の共同研究者2名分の旅費として使用し、その残額は、4月27日に開催した研究会の共同研究者3名分の旅費の一部として使用することとした。
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Research Products
(4 results)