2018 Fiscal Year Research-status Report
英国における一連の保険法制改革が海上保険分野に及ぼす影響を検証する
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18K01350
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
野口 夕子 近畿大学, 法学部, 教授 (40314794)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海上保険法制 / 1906年海上保険法 / 2015年保険法 / 2012年消費者保険(告知・表示)法 / 2016年企業法 / 保険法 / 商法 / 損害保険契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際的に共通の取引ルールが確立されている海上保険分野において、従来、その共通ルールとして受け容れられてきたのが、英国海上保険法制であり、同国における1906年海上保険法である。その英国にあって、2006年から進められてきた保険法制改革の集大成というべき新法が、近時、相次いで成立した。2012年消費者保険(告知・表示)法、2015年保険法並びに2016年企業法である。これら新法は、これまでの運用実態を踏まえたものとなっている一方、保険契約一般の共通ルールであった判例法及び1906年海上保険法に大幅な修正を加えるものとなっている。換言すれば、海上保険契約にかかる国際的統一規則に大幅な修正が加えられるということである。わが国をはじめ、船舶保険、貨物保険を利用する多数の諸外国の中で、1906年海上保険が国際的な共通ルールとしての役割を担っていることに鑑み、英国における一連の保険法改革によって、1906年海上保険法が如何に変更されることになったのか、また、その改正によって海上保険実務が受ける影響を検証することが、必要不可欠かつ急務である。英国における一連の保険法制改革について、2015年保険法を中心として、その現状と最新の議論を精査、検証することにより、同改革が海上保険法分野に及ぼす影響を明らかにすることが、本研究の目的である。 本研究の目的を達成するためには、英国における今回の保険法制改革はもとより、同国海上保険に関する法律の全貌を把握しなければならない。そして、そのためには、まず、1906年海上保険法が2015年保険法によって如何に改正されたのかを明らかにする必要があるが、当該年度は、その第一段階として、2015年保険法が改正されるに至った経緯を検証すべく、国内のみならず、英国において、かかる議事録をはじめ、関連文献などの資料収集と、並行して当該資料の整理・分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国における一連の保険法制改革について、2015年保険法を中心として、その現状と最新の議論を精査、検証することにより、同改革が海上保険法分野に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする本研究において、その目的を達成するためには、同改革はもとより、英国海上保険に関する法律の全貌を把握しなければならない。そして、そのためには、まず、1906年海上保険法が2015年保険法によって如何に改正されたのかを明らかにする必要がある。加えて、1906年海上保険法は、2015年保険法によってその要所において改正を余儀なくされているのみならず、2015年保険法及び2016年企業法をもって新設された規定も、同法に組み入れられている。また、2012年消費者保険(告知・表示)法は、消費者保険契約における告知及び表示に関わるものであり、個人所有のプレジャー船舶を担保する保険証券に適用されるであろうことから、同法もまた、海上保険に若干、準用される。したがって、本研究では、まず、1906年海上保険法が2015年保険法によって如何に改正されたのかを明らかにする。そのうえで、かかる改正が、英国海上保険法制、ひいては海上保険実務にどのような変更をもたらすのかを検証するとともに、2015年保険法をはじめ、新法によって新設された規定を精査することにより、当該規定が1906年海上保険法に組み込まれることによって、同法はじめ、海上保険実務が受ける影響を考察することになる。以上の研究遂行計画のもと、当該年度は、前記「5.研究業績の概要」にあるように、2015年保険法が改正されるに至った経緯を検証すべく、国内のみならず、英国において、かかる議事録をはじめ、関連文献などの資料収集と、その整理・分析を並行して行ったが、当初よりの研究計画及び最終年度に研究成果を論文として公表するという目標に照らして、順調な進捗状況にあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的と、それを達成するべく前記「7.現在までの進捗状況」(2)理由に示した研究計画にしたがって、今後も、英国における保険法、海商法のみならず、会社法分野にかかる研究者から関連資料や論文の提供を受けるとともに、同国内を中心とした先行研究を踏まえた助言を受けつつ、本研究を進めていく。同時にまた、既に入手している議事録をはじめとする関連資料、先行研究論文等を渉猟することにより、当該研究の成果をかたちにしていきたい。 なお、補助事業期間(5年間)2年目となる2019(令和元)年度は、同年6月に渡英、英国Southampton大学Law Schoolの研究者等から同国内の現状報告及び関連資料等の提供を受けることになっている。
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