2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01352
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
瀧 久範 関西学院大学, 法学部, 教授 (40508636)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不当利得 / 不法原因給付 / 契約 / 公序良俗 / 一般予防 / 抑止 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、不法原因給付の返還遮断の可否について、PECL等の国際的モデル準則で示された、わが国の民法708条および判例学説のアプローチ(原則遮断アプローチ+要件アプローチ)とは異なるアプローチ(例外遮断アプローチ+裁量アプローチ+構造化された裁量)が、各国法の解釈論にどのような影響を与えているのかを分析することによって、あるべき判断枠組みとそれを支える原理を析出する一環として、アメリカ合衆国における近時の判例学説を分析した。 第2次契約法リステイトメント(1981年)の「第8章 公共政策を理由とする強制不可」中の「トピック5 原状回復」(197~199条)を分析した。197条は「不相応な喪失にならない限りで、原状回復請求を認めない」と定め、そのコメントでは、例外を認める考慮要素として、178条3項に挙げる諸要素(非行の重大性、公共政策の強度など)が用いられるとし、原則遮断アプローチ+裁量アプローチ+構造化された裁量に立つ。さらに198条(双方不法)および199条(改悛の機会)が例外を定める(要件アプローチ)。これに対して、第3次原状回復及び不当利得リステイトメント(2011年)第32条は、文言上は例外遮断アプローチ+裁量アプローチが採用しているかにみえるが、コメントでは第2次契約法リステイトメントの帰結を維持し、適用可能な準則に再定式化したにすぎないと述べられている。同条の判断枠組みは、契約を強制不可とする法令から返還請求の許否が明らかでない場合には、当該政策・禁止の強度・原告の有責性の程度・抑止効・司法的判断のコスト・私的正義などの諸要素を評価して決せられるとし、双方不法や改悛の機会の問題を当該政策、原告の有責性の程度の各要素に解消する。以上より、アメリカ合衆国における法状況と国際的モデル準則との相互作用を認めることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検討した判例学説から、アメリカ合衆国における法状況と国際的モデル準則との相互作用を見出すことができたが、なお検討できていない裁判例が少なからず存在し、その整理が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査からも、わが国の解釈論においても、各国法と国際的モデル準則との関係を分析することが有用であることが分かったので、残ったアメリカ合衆国における裁判例を早急に分析し、イングランドにおける近時の判例学説の分析に移りたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、資料収集とその分析に終始していたこと、および、学会や研究会等で研究に関連するものが開催されなかったことから、旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、学会や研究会に積極的に参加する予定である。
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