2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01352
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
瀧 久範 関西学院大学, 法学部, 教授 (40508636)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不当利得 / 不法原因給付 / 契約 / 公序良俗 / 一般予防 / 抑止 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、不法原因給付の返還遮断の可否について、PECL等の国際的モデル準則で示された、わが国の民法708条および判例学説のアプローチ(原則遮断アプローチ+要件アプローチ)とは異なるアプローチが、各国法の解釈論にどのような影響を与えているのかを分析することによって、あるべき判断枠組みとそれを支える原理を析出する一環として、イングランドの近時の法状況を検討した。 イングランドでは、伝統的に、原則遮断アプローチの一般原則であるex turpi原則やin pari原則が実務上用いられてきたが、結論の妥当性を確保するため無数の例外則が採用されることとなった。そのうち、とくに公共の良心テスト(public conscience test)は、裁判官の自由な裁量を認めるものであり、問題視された。そこで、イングランド法律委員会は、諮問書154号(1999年)を公表し、「原則遮断アプローチ+裁量アプローチ+構造化された裁量」という判断枠組みを提案した。その後、Gray v Thames Trains事件、および、Stone & Rolls v Moore Stephens事件では、判決理由において判断の政策的要素が指摘され、「構造化された裁量」が採用された。これらの判決を受けて、法律委員会は、上記立法提案を取り下げた(2010年)。 しかし、2016年に、Patel v Mirza事件において、貴族院は、「構造化された裁量」を否定し、再び裁判官の自由な裁量を認めることを明言した。この判決に対し、学説では賛否入り乱れているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イングランドの法状況を相対化するためには、大陸法の議論だけでなく、オーストラリアなどのコモンウェルス諸国の動向についても分析をする必要がある。とくに、オーストラリアは特殊な発展を遂げているようである。それらの分析が間に合わなかったため、これを踏まえたイングランド法の検討ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
オーストラリアにおける契約の清算および違法性抗弁の分析を行い、それを踏まえたイングランド法の検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、資料収集とその分析に終始していたこと、および、年度末に予定していた海外出張がキャンセルされため、次年度使用額が生じた。 次年度は、学会や研究会に積極的に参加する予定である。
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Research Products
(4 results)