2019 Fiscal Year Research-status Report
養育費立替制度導入に向けて-「法は家庭に入らず」を超えて-
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18K01358
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
生駒 俊英 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (00514027)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 養育費 / 法は家庭に入らず / 子どもの貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続きわが国における「法は家庭に入らず」の原則について、法学の分野に限らず、広く家族・家庭をテーマとして文献を読み進めた。文献からは、弱者保護のための国家介入が保障されない制度設計について、近世における秩序の影響があったのではとの指摘がなされていた。指摘されるように近世から家族に関する事柄は、私事として扱われていたことが伺える。例えば、離婚に関しても私的に決める慣習は江戸時代からあったが、その一方で離婚は当事者だけでなく、周りの者も関与しており、実際は夫の追い出し的な離縁(離婚)は抑制されたとされる。つまり制度設計自体は、現在と同様で当事者自治としているが、世間の慣習が一程度の当事者間の公平性を担保していたとも考えられる。しかし、現在では、当事者を取り巻く環境が大きく変化していることに注意しなければならない。 比較法からの研究については、今年度は、“rechtsfreier Raum”をキーワードの下、複数のドイツ文献を読み進めた。ドイツ基本法第6条は、子の養育に関する親の義務について国家が監視し、危険化回避のために介入して、適切な危険回避の措置をとることができると規定する。また安易な介入を防ぎ、行政、裁判所が協力して支援する重要性も示されていた。より具体的に国家が介入する場面として、BGB1666条(国家による監督)では、日本との相違点として司法の介在が必ず存在することが指摘されていた。またドイツにおいても、戦後、ナチスの家族政策への反省から家族政策に対する慎重な姿勢があったようであるが、現在は日本とは異なり広範な家族政策がすすめられている点は興味深い点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法の研究は予定通り進んでいるが、比較法的視点からの研究は少し遅れているため、来年度は力を入れたい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、基本的には申請の際に記載した研究計画書に沿って研究を進めるものとする。 当初予定していた海外での資料収集等は難しいため、可能な限り電子ジャーナル・データベース等を利用して研究を進める。
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Causes of Carryover |
海外での研究(主に資料収集)が進まなかったため次年度使用額が生じた。 予定していた資料収集等については、来年度または再来年度に実施する予定である。
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