2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01363
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 相続法 / 均分相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、均分相続の理念が現代において有する意義と位置づけを明らかにするために、準備的な検討をおこなった。その具体的な研究内容は、以下の2点に分類できる。 第一に、昭和22年・昭和37年・昭和55年の各民法(相続法)改正を素材として、各改正時の社会・家族の状況を統計資料等に基づき明らかにしつつ、とくに相続人の範囲とその相続分の設定をめぐる議論に着目し、当時の法改正作業が均分相続の理念をどのようなものとして位置づけ、実現しようとしたのかについて、概観的な検討を試みた。 第二に、平成30年相続法改正における法制審議会の議論とこれに対する学界の反応等を分析することにより、①どのような問題が改正課題として俎上にのぼり、家族と社会の諸変化(多様化・高齢化等)に対してどのように対応するように改正された(されなかった)のか、および、②平成30年相続法改正によって、相続法の理念とその位置づけがどのように変容した(しなかった)のかを検討した。第一の点の検討結果に加え、とりわけ第二の点(①②)の検討を通じて、現代においては、被相続人との一定の身分関係にあることのみでは、近親者(配偶者・子など)による遺産承継は必ずしも基礎づけられないという認識が醸成されつつある可能性があることを明らかにした。このことは、身分関係に基づく均分の遺産承継という相続法の基本設計が変容する可能性、換言すれば、身分関係で枠づけられない遺産承継ルールの可能性をも示唆するものとも考えられるところ、相続事件の実態分析を通じてより具体的に分析を進める必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度における検討課題として予定していた研究内容は、おおむね検討できた。もっとも、平成30年度にした研究の結果、新たな知見を得たことにより、さらに追加して分析・検討したい関連問題にも気づいたため、これら関連問題については来年度に引き続き検討したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度におこなった研究結果を基礎として、平成31年度以降は、相続事件の実態分析等を通じて、均分相続の理念の現代的な意義と位置づけについて検討を深めたい。同時に、わが国の議論状況を客観的な視点から検討するために、比較法的研究も進めたい。具体的には、諸外国(とくにドイツ、オーストリア、オランダ等)における相続法改正に関する議論状況を調査し、相続法改正作業の中で均分相続の理念(厳密には、わが国相続法におけるそれとは、理念としてのウェイトや内容は異なる点があるが。)がどのように位置づけられてきたかを分析する。その際には、法定相続制度のみを素材とするのではなく、いわゆる相続契約の制度も分析対象とする。相続契約制度は、わが国では均分相続の理念を損なう可能性があることを理由に導入されていない制度であるが、諸外国では均分相続の理念の修正要素として一定の機能と役割を担っているため、その具体的な規律と内容について分析することにより、その理論的課題とわが国における立法論的可能性について検討したいと考えている。
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Research Products
(4 results)