2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01363
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 相続法 / 均分相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31(令和元)年度は、平成30年度に行った研究の成果の一部を論文として公表した。そのうえで、当初の予定どおり、諸外国における相続法改正に関する議論状況を調査し、相続法改正作業の中で法定相続制度や遺留分制度がどのように設計されているかを分析した。ドイツにおける相続法改正の概要及び相続契約制度についてはすでにある程度調査をしていたため、令和元年度は、比較的最近になされたオーストリア相続法の改正(2015年)について、相続法改正の趣旨及び内容を調査・検討した。 オーストリアの改正相続法では、①配偶者の法定相続権(遺留分権)の強化を図るとともに、いわゆる内縁配偶者に対しても一定の場合に特別の相続権を付与する可能性が開かれた一方で、②遺留分権利者の範囲を縮小させたり(尊属の遺留分の廃止)、遺留分の減額の対象者や相続権(遺留分権)はく奪事由を拡大したりするなど、被相続人の処分の自由を広げる方向も志向されたことが明らかとなった。①②の傾向は、程度の差はあれ他の欧米諸国でもみられる傾向である。破綻主義を念頭におき、婚姻関係の継続は個人の意思・意図的選択の結果であると捉えれば、②だけでなく①もまた、個人の具体的な意思に基づく相続規律であると捉えることができると思われる。 さらに、オーストリアの2015年相続法改正ではその拡充が検討されつつも実現されなかった相続契約(ドイツ法とは異なり、配偶者間でのみ可能とされる。)についても、制度の内容を調査した。こうした調査を通じて、相続契約制度により被相続人が生前に長期的な視野で老後資産を活用する仕組みを用意できる可能性について分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の探究のために予定していた個別の研究項目は、大きく分けると、①立法史的・法社会学的・比較法的な観点からの各検討と、②契約による事前の相続規律に関する外国法研究と裁判例・学説研究である。前半の研究機関で①についておおよそ検討を行っており、後半の研究期間は当初の予定どおり、②の検討に注力できる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、外国法(ドイツ法、オーストリア法、オランダ法など)における将来の相続に関する契約を有効とする制度の内容やその利用実態をめぐる議論等を検討しつつ、わが国の相続法に関して、将来の相続に関する契約の可否をめぐる裁判例と学説の議論を分析する。それとともに、将来の相続に関する契約規律を導入する場合にこれと抵触しうる相続権保障制度(相続放棄や遺留分放棄に関する制度など)について、その現代的な位置づけ・役割を検討する。
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Research Products
(4 results)