2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01363
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浦野 由紀子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70309417)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 相続法 / 均分相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、昨年度に引き続き外国法の調査・分析をおこなった。昨年度までにおこなったドイツ法・オーストリア法の相続制度及び相続契約の分析をふまえつつ、その他のヨーロッパの国々(たとえばスイス法・フランス法・イタリア法など)も新たに調査対象に含め、各国における「契約による事前の相続規律」の許否をめぐる議論の状況を概観した。 相続契約を設ける国については、相続契約制度の設計と意義・評価や利用の実情等も、(海外出張が困難であったため、もっぱら学術文献やウェブ資料等に基づいてであるが)可能なかぎり調査した。その結果、①相続契約を認めている国において、どのような内容を相続契約で定めることができるか(=相続契約の概念・定義)は、国によってさまざまに異なること、②国によって、相続契約の利用状況が大きく異なること(たとえばスイスでは、相続契約が非常に重要な遺産承継手段とされているのに対して、ドイツやオーストリアでは、相続契約は実務上はあまり重要な制度ではなくなってきていること)、および、③相続契約を認めていない(禁止している)国においても、契約による相続規律の必要性が強く認識されるようになっており、さまざまな対応を図ろうとしていること、などを明らかにすることができた。さらに、③に関しては、相続契約を認めていない国でも、相続契約以外の代替的解決が図られていること(たとえば、経営承継に限定して家族協定の制度を導入した例(イタリア)、遺産承継手段として夫婦財産契約が利用されている例(フランス)など、相続契約とは異なる手段が用意・活用されていること)も判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の探究のために予定していた個別の研究項目は、①立法史的・法社会学的・比較法的な観点からの各検討と、②契約による事前の相続規律に関する外国法研究と裁判例・学説研究に大別される。研究期間の後半にあたる令和2年度は、②の研究項目のうち、主として外国法の検討・分析をおこなうことを予定していたところ、おおむね当初の予定どおりに研究を進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までに明らかにすることができた外国法の調査・分析結果をふまえ、令和3年度は、わが国における裁判例・学説の議論の分析を進める。これにより、将来の相続に関して契約による規律を認める場合に、それとの抵触が問題となる相続権保障制度(相続放棄、遺留分放棄に関する制度など)について、その現代的な位置づけと役割を検討するとともに、契約による事前の相続規律の具体的な導入可能性を、わが国の社会・家族の状況も考慮しつつ検討する。
|
Research Products
(2 results)