2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01365
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野田 和裕 広島大学, 法務研究科, 教授 (90294503)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 包括担保 / 不当条項 / 補償理念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、包括担保に関する適正な約款形成のあり方について「取引の態様及びその実情」や「取引上の社会通念」に照らして研究しようとするものであり、約款の内容規制に関する各論的テーマとしても位置づけられる。 改正民法548条の2(定型約款の合意)第2項では「(取引)の実情」や「取引上の社会通念」を考慮することとされているが、これは信義則に反するかどうかを判断するに当たっては、当該条項そのもののみならず、取引全体に関わる事情を取引通念に照らして広く考慮することとするものであり、当該条項そのものでは相手方にとって不利であっても、取引全体を見ればその不利益を補うような定めがあるのであれば全体としては信義則に違反しないと解されることになる(部会資料86-2・4頁)。このような解釈方法は、ドイツ法の補償理念Kompensationsgedankeに沿った考え方であり、これに関する筆者の先行研究ともリンクさせながら、本テーマの研究を開始した。 補償理念の考え方からは、従来日本で採られてきた「消去法的アプローチ」(不当条項を無効とする解決)とは異なる視点を得ることができる。すなわち、約款作成者(包括担保権者)の側にも約款形成において指針となるべき法理論を与えるものであり、契約内容適正化へ向けた約款作成者の自主的取組みを促進しながら、大量取引の定型化・効率化といった合理化利益にも十分に配慮する視点を提供できる。この補償理念に関する判例が、ここ数年でかなり集積すると共に、これとは反対に、ある条項がそれ自体単独では許容される内容である場合でも、別の条項が共働作用することによって契約相手方の不利益を増幅させ、結果として不当性を帯びる(無効となる)、という「増幅作用」に関する判例も(以前は見当たらなかったが)幾つか現れており、こうした判例と学説を網羅的に検討するため、資料収集と平行して分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究を開始するにあたって必要となる、筆者の先行研究の後に現れた判例・学説に関する資料収集とその分析調査をおおむね順調に進めることができたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を遂行するにあたっては、約款法プロパーに関する研究成果などの副次的な成果も期待できる。本研究の中間報告として、いくつかの研究会において研究報告を行う予定である。また、こうした中間報告を大学紀要あるいは法律系商業雑誌に逐次掲載したいと考えている。
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