2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of civil support in relatives
Project/Area Number |
18K01366
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小池 泰 九州大学, 法学研究院, 教授 (00309486)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 扶養 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度に引き続き、2019年に設置された法制審議会民法(親子法制)部会の論議について、扶養法の観点から検討を行った。同部会は、嫡出否認の事後処理として、父性推定を受けていた母の夫が「否認前に子の養育のために支出した費用の償還に関する規律の要否」を検討課題として挙げていたが、その扱う範囲は相当に限定的なものとなった。すなわち、2021年2月に公表された「民法(親子法制)等の改正に関する中間試案の補足説明」では、「成年等に達した子の否認権の新設」において、これを否定する甲案と肯定する乙案とを挙げたうえで、後者の否認判決の効力の箇所で、夫が子に扶養に係る不当利得の返還請求をする場面を問題とするにとどまる(なお、成年子による否認の要件として、夫が子に扶養をしていなかったことを要件とすべきか、も検討課題としている)。 しかし、この場面での扶養求償は、従前の父子関係を子から一方的に否定される夫について、扶養利益をいかに保護すべきか、という観点から検討すべき問題である。この点で、現行の不当利得では要件充足が困難である、といった議論では不十分であって、母に対する求償も含めて夫の利益を保護する手当を用意する方向で検討がなされるべきであろう。もっとも、そもそも扶養求償は、親子関係に関わる場面でいえばおよそ法的親子関係が否定された場合には常に問題となるのであって、嫡出否認における事後調整は、この一具体例にすぎない。この点においても、法解釈論としては、扶養求償を扶養法内在的に検討する必要があることが明らかとなる。
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