2020 Fiscal Year Research-status Report
The Adequate Allocation of Insolvency Risk by Means of Duty of Disclosure of Credit Information on the Collateral Provider
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18K01368
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小山 泰史 上智大学, 法学研究科, 教授 (00278756)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カナダ法 / ケベック / 民法典 / 所有権留保 / 動産・債権担保法改正 / 対抗要件 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は業績として「所有権留保の対抗要件立法に関する若干の検討」法律時報92巻11号(2020年10月号)44~49頁を公表した。2020年1月末にカナダに調査旅行に行った結果、公表するに至ったものである。海外出張の時期としてはぎりぎりの段階であった。日本法の所有権留保は物権変動がないが故に対抗要件なくして他の債権・担保権に優先するというのが判例法理である。しかし、カナダのケベック州民法典は、担保権一般について対抗要件具備を要求するだけではなく、これとは別に、所有権留保に、担保としての「所有権の留保」それ自体を公示することを求めている。この立法の仕方は、日本法における動産・債権担保補改正に重要な示唆を与えるものといえる。 この論文に加えて、「賃料債権に対する物上代位ーー2017年改正民法511条2項の射程ーー」上智法学論集64巻3・4号合併号57~74頁を2021年4月以降に公表予定である。2017年の民法改正前、抵当権の賃料債権に対する物上代位は、抵当権設定登記が自働債権の取得時より前である限り、原則として設定者のする相殺に対して物上代位が優先するとされていた。この結論が、2017年改正民法の511条2項の「前の原因」の解釈条も成り立つのかについて検討している。 なお、申請者自身の研究成果ではないが、本研究課題に関連する研究として、木村仁「カナダ法」「各国の動産・債権を中心とした担保法制に関する調査研究業務報告書」(商事法務研究会・2020年)等がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年4月から5月の最初の緊急事態宣言の発令によって、コロナ渦、4月・5月は学内の図書館や法科大学院図書室など、ほとんどすべての施設が緊急事態宣言のために利用できず、研究が停滞せざるを得なかった。本来であれば2020年3月末で研究期間は終了すべきところ、今回科研費としては初めて研究期間の1年の延長を申請した。本務校での業務がほぼ100%オンラインで処理され、授業準備や授業そのものだけでなく、会議等もすべてオンラインで行う状況の下、慣れない業務処理の手間に忙殺され、研究が手薄となることは避けがたい状況であった。また、資料の入手についても輸入便の到着遅れや、本来刊行されるべき定期刊行物の発行が遅れているなど、研究の進捗を阻む社会的要因が非常に多い状況が続いている。1年間の延長後も、その状況は大きくは変わらないと予想される。加えて、コロナ渦、法科大学院長としての校務もまた、すべてオンライン対応となり、対面の場合でさえ十分に重い業務負担が、倍加以上の負荷となってのしかかってきていた。 社会全体がコロナ渦の現状では未曾有の変化に晒されている中、法科大学院の責任者としての業務は、研究計画を遅延させる大きな要因となったことは否定できない。
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Strategy for Future Research Activity |
大学の授業はこの4月から対面を原則とする形となったが、相変わらずコロナの感染リスクは高止まりしており、当面予断を許さない。この困難な状況下、2021年度は研究の完成と新たな地検の獲得へ向けて努力したいと考えている。先に挙げた「賃料債権に対する物上代位ーー2017年改正民法511条2項の射程ーー」上智法学論集64巻3・4号合併号57~74頁では、本研究の着想である「融資の実行前に債務者に債務状況の開示義務を課すのはどうか」という視点との関係で、債務者をインフォメーションセンターとする構想が十分に機能し得ない状況があることを指摘することができた。その意味で、本研究課題の研究の視点の限界が見えつつあることは確かで、今後その限界をどのように乗り越えていくかを残された研究期間で検討することが焦眉の課題であるということができる。 もっとも、諸外国の動向を把握するにしても、海外の定期刊行物の刊行も例外なく遅延しており、年1回かならず刊行されるはずの資料もまだ発刊されていない。海外への直接の出張と現地での資料収集に出かけられるようになるのは何時のことになるのか。このことは申請者だけに限っての問題ではないが、オンラインでのインタビューだけでは不十分であり、やはり必須である現地での資料収集再開の目処は未だ立っていない。1年間の研究機関延長をもってしても、パンデミック渦の研究には一定の限界があることも確かである。
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Causes of Carryover |
コロナ渦により所属機関の付属図書館や研究室等の研究施設が2020年4月から5月まで2ヶ月間使用できず、やむを得ず、研究期間の延長を申請し認められたため、次年度使用額が発生した。延長が認められた2021年度においては、さらに研究資料を追加して購入するほか、更新の時期を迎えるパソコンの周辺機器(ドキュメントスキャナー等)等の購入を予定している。本来、2020年度中の発刊が予定されていた定期刊行物がコロナ渦の状況で発刊が遅れていていることもあり、それらの購入も必要である。
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Research Products
(1 results)