2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory Research for Establishing the Law of Payment System by Integrating Credit Theory of Money and Theory of Negotiable Instruments
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18K01369
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
伊藤 壽英 中央大学, 法務研究科, 教授 (90193507)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 決済システム / 暗号資産 / スマートコントラクト / 現代貨幣理論 / 有価証券 |
Outline of Annual Research Achievements |
21年度は、20年度に発表した「決済取引法制に関する一考察」(日本比較法研究所『グローバリゼーションを超えてーアジア太平洋地域における比較法研究の将来』所収」にもとづき、貨幣論と有価証券概念の止揚が可能であること、及び決済システムとの関係から、利用者側の信認と法的保護の必要性に関する研究成果を示すことができた。次に、その成果を暗号資産を用いた支払の仕組みに応用できるかどうか、という問題に取り組んだ。この点、二つの課題が明らかになった。まず、暗号資産業者の破綻に関し、決済サービス業に関する規制が十分でないこと、および利用者保護に関する法的問題対応の国際的枠組みが必要であることが明らかになった。近時利用されている様々な支払手段について、利用者の利便性が向上している一方で、コロナ禍による巣ごもり需要から、これらの支払手段の利用に伴う紛争も生じているところから、決済サービスと支払手段の関係に関する理論的分析を基礎とする法的規制枠組みと国際的な協調の必要性を論証することが出来たと考えている。第二に、近時、サプライチェーンなどに組み込まれているスマートコントラクトにおける決済手続が、自動的に終了しているにもかかわらず、コロナ等の事後的な事情によって紛争が生じた場合の法的処理が問題となっていることが挙げられる。この点は、貨幣論と有価証券論の止揚という本研究の成果にもとづき、決済システムと決済終了性に関する利用者の信認という視点からの分析が有用である、との知見を得るに至った。以上の点から、グローバルな金融規制のさらなる必要性と、デジタルフォレンジックといった実務上の対応の必要性をついて、将来の研究課題を認識するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ブロックチェーン技術・暗号資産といった先端的な技術に関する基礎的知識を確認した後、実装の状況をサーベイし、問題点の把握と理論的解決を模索することを予定していた。その際、グローバルサプライチェーンの実態も対象とすべき、海外でのサーベイも視野に入れていたが、昨今のコロナ禍により、中止せざるを得なかった。したがって、本来の研究計画より、若干進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の状況改善により、当初予定していたサーベイを奨める予定である。かりに現地での調査が敵わない場合には、スマートコントラクトの実証状況と紛争事例について、インターネットを通じてサーベイを試みることとする。他方で、暗号資産ビジネスの破綻も報道されているように、とくに銀行規制の及ばない領域における紛争事例において、法的対応を考える必要が生じている。本研究においては、決済システムとの結合の義務化、システム提供者側の責任および紛争解決に必要なデジタル・フォレンジックについて、なんらかの示唆ができるよう研究を進めることとする。
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Causes of Carryover |
研究計画に基づき、ブロックチェーン技術を用いた支払システムの実装に関する専門家へのインタビューを予定し、加えて、過酷の規制の状況につき、海外での調査を予定していたが、コロナ禍の状況により、これらを中止したため。
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