2019 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待防止のための柔軟な支援と処置-ドイツの新たな児童保護法制を参考にして
Project/Area Number |
18K01370
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩志 和一郎 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70193737)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童保護 / 児童虐待 / 少年援助 / 障害者権利条約 / 子どもの基本権 / 親子法の変質 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 時期的に前年度(2018年度)となるが、2019年3月に、ベルリン市及びレーゲンスブルグ市において、聞き取り調査及び資料収集を行った。この調査内容の分析は、2019年度初めに集中的に行った。ベルリン市で行った研究協力者ベルリン工科大学のミュンダー教授への聴き取り結果からは、2017年に一旦連邦議会を通過したまま停止している社会法典第8編の改正作業の進行状況について、急激に増加する難民の児童に対する対応方法、児童の権利条約との関係で障害を持つ児童と健常な児童の取り扱いの平等化といった、改正作業で当初予想していなかった事態が立法作業の停止原因となっていることを確認した。当初計画したミュンヘン市少年局の調査は、先方の都合で実現できなかったが、同じバイエルン州のレーゲンスブルグで2名の少年局職員にインタビューした。レーゲンスブルグでは、少年局を家族問題部局と統合し、児童及びその親の早期支援について効率よく対応する形がとられていた。ベルリンとは規模が違うことから、虐待対応の数は必ずしも多くはないが、バイエルン州共通の対応マニュアルに従いつつも、柔軟な対応がとられていた。 2 2019年12月にベルリン市において、連邦司法省及び少年局の聞き取り調査を行った。少年局はフリードリクスハイン=クロイツベルク少年局の一時保護担当職員に対して行った。連邦司法省については、2019年10月に連邦―州-作業部会「基本法における子どもの権利」の最終報告書が提出されたとの知見と、同報告書を入手することができた。この報告書については現在、全訳作業に従事している。 3 2020年3月にベルリン及びヘッセン州を中心とした聴き取り調査を計画していたが、コロナウィルス蔓延のため、出張は断念せざるを得なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 コロナウィルス蔓延との関係で、2020年3月に計画していたブランデンブルグ州の少年局で、早期支援の担当者からの聴き取り調査は中止とせざるをえなかった。 2 2019年の3月と12月に実施した聞き取り調査については、その内容のとりまとめは終了している。 3 2019年10月に公表された、連邦-州-作業グループ「基本法における子どもの権利」は、本研究に大きな意味を持つと考えられるので、付録資料を除く分の全訳を行い完成した(A4 版119頁)。またそれと合わせて、同報告書で引用されている、2011年制定のオーストリアの「子どもの権利に関する連邦憲法」を翻訳した。さらにドイツでは、現在親子法(血統法)の全面改正作業が進行している。その基礎となった、血統法作業グループの最終報告書「血統法改正のための諸提案」(2017年)に収められた91項目のテーゼ、これを受けて2017年に制定された「非配偶者間で精子を使用した場合における血統を知る権利の規律のための法律」、さらに2019年3月に公表された連邦司法省の民法(血統法)改正のための討議者用部分草案を全訳した。これらの翻訳については、すでに資料集第1巻として取りまとめ、印刷製本の過程に入っているが、コロナウィルスの影響で大学が閉鎖され、印刷所も作業が停止してしまったため、遅れが生じている。7月に公刊の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1 2020年度には、2回のドイツ調査を計画していたが、6月に予定していたバーデン-ヴュルテンベルクでの調査については、キャンセルせざるをえなかった。同州では、州法としての児童保護法の大規模改正が計画されており、それを見据えた児童委員会の大規模な最終報告書が提出されている。可能であればそれらの事情の詳細について、知見を得るため現地調査を実現したいと考えている。しかし、現時の状況のままでは困難とも考えられるので、研究の主力は継続して資料調査によらざるを得ない。現在、上記バーデン-ヴュルテンベルクの報告書の全訳作業に当たっており、資料集の第2巻として交換する予定である。 2 上述の通り、研究計画全体を通して中心に置いてきた現地での調査委が今後とも難しいと考えられることから、研究のとりまとめに当たっては、方針を一部修正し、理論面及び政策面での展開に焦点を当てた形にしていかなければならないと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年3月にドイツ出張を計画していたが、コロナウイルスの影響で中止せざるをえなかったため。
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