2018 Fiscal Year Research-status Report
債権法改正が金融実務に与える影響に関する日仏比較法研究
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18K01374
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白石 大 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (90453985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 債権法改正 / 金融法務 / フランス法 / 債権譲渡 / 対抗要件 / 債権譲渡制限特約 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,日仏両国における債権法(債務法)改正の調査・分析を行うための準備段階として,まず文献の収集に注力した。次いで,債権譲渡の対抗要件および譲渡制限特約に関する分析・検討を開始した。 ①債権譲渡の対抗要件に関する研究成果は次のとおりである。日本の債権法改正では,民法467条の通知・承諾による対抗要件制度は,多くの問題点を指摘されながら結局維持されることになった。これに対し,日本がかつて範をとったフランスでは同様の制度が廃止され,何らの手続も要せず当然に譲渡を対抗できることとされた。フランスにおいて,譲渡の公示性と手続の煩雑さとの二律背反を衡量したうえでこのような決断がされたことは,債権法改正後の日本の制度運用や今後のさらなる法改正を考えるにあたっても大いに示唆に富むものであると思われる。 ②債権譲渡制限特約に関する研究成果は次のとおりである。日本では,債権法改正によって譲渡禁止特約の効力が弱められることになったが,これに対してフランスの債務法改正では,債権を譲渡不能とする合意の有効性がはじめて明文で認められるに至った。これは一見すると,両国でまったく逆方向の改正が行われたようでもある。しかし実際には,フランスでは事業者間の取引において譲渡制限特約を無効とする規定が商法典に置かれており,全体としてみればむしろ日本の改正法以上に債権譲渡を促進する規律になっている。日本でも,改正債権法施行後の運用状況次第では,フランスのように特別法によって債権譲渡をよりいっそう容易にすることも検討されてよいと思われる。 ①の成果については,2018年度に刊行された論文集において公表したほか,日本登記法研究会研究大会においても報告を行った。②の成果についても,2018年4月に開催された日仏の研究者によるコロークにおいて報告を行い,この内容は2019年度中にフランス語で公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,日仏の債権法(債務法)改正に関する文献の収集をほぼ予定どおり行うことができた。また,これまで続けてきた債権譲渡研究とうまく接合し,本課題に即した研究成果を挙げることもできたと考える。 他方,2018年度は,思いがけなく所属研究機関・部局の役職を担うこととなり,後半は研究に割くことができる時間が減少した。また,同様の理由により,予定していたフランスでの現地調査を2018年度は実施することができなかった。この分の調査は2019年度以降に実施することを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降も,当初の研究計画に沿って次のとおり本課題の研究を推進していく予定である。 2018年度に実施した債権譲渡の研究に加えて,2019年度以降は債務引受,弁済による代位,相殺,債権者代位権,詐害行為取消権などの諸制度についても,日仏両国の債権法(債務法)改正を比較・分析していく。2018年度に収集した資料・文献に基づいてこれを行うほか,引き続き資料・文献の収集に努める。 また,フランス債務法は2016年10月に施行されており,2019年度以降は改正法のもとでの判例が増えてくることが予想される。これらの新判例も適時に分析の対象に加えていく予定である。 さらに,2018年度は実施できなかったが,2019年度以降はフランスに赴いて,現地での改正法の運用状況を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」欄に記載のとおり,研究代表者の校務負担が増したことにより,2018年度に予定していたフランスでの現地調査を実施することができなかった。このため,旅費として予定していた金額(32万円)のうち約半額が未使用となったものである。 2019年度は,当初予定していた分に加えて,2018年度に実施することができなかった現地調査をも行う計画であり,これに次年度使用額を充てることを予定している。
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