2018 Fiscal Year Research-status Report
複合的消費者役務提供契約における解消法理とその現代的機能に関する研究
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18K01378
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
寺川 永 関西大学, 法学部, 教授 (50360045)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合契約 / 消費者契約 / 役務提供契約 / 民法 / 解消法理 |
Outline of Annual Research Achievements |
開始年度に当たる2018年度では、本研究のテーマである複合的消費者役務提供契約における解消法理について、国内外の文献の読み込み等による分析を基礎として、研究を行ってきた。 その中でもとりわけ、プリペイド型電子マネーを登録したスマートフォンの紛失または盗難が生じた場合に、当該電子マネーによるサービスを提供する事業者には、不正利用を防止するために登録会員がとるべき措置について適切に約款等で規定し、これを周知する注意義務があるとされた。東京高判平成29年1月18日判時2356号121頁の判例研究をし、公表した(雑誌論文1)。一見すると、消費者紛争における事業者の注意義務を課した、ひとつの下級審裁判例にしかすぎない。しかし、情報通信機器であるスマートフォンなどの携帯端末を購入するにあたって、携帯端末自体の購入契約と、携帯端末を使って通信環境を利用するために、通信事業者との間で通信契約を結ぶことが多い。また、上記判決の事案においては、通信サービスを利用するにあたって、そのサービスの支払にあたって、クレジットカード決済が行われており、少なくとも現象面だけ見れば、いわゆる「複合契約」の一場面として捉えることが可能である。その意味では、本研究とも深い関連性を有する検討を行うことができた。さらに、そのサービスはまさに「役務」であることから、複合的消費者役務提供契約の一場面として捉えることも可能であると思われる。 総じて、開始年度ということもあり、複合的消費者役務提供契約の解消法理の理論的解明に至るまでの十分な研究を行い、成果を出してきたとは言いがたい。しかし、そうした法理の解明にあたって重要となる事象の分析を行うとともに、海外の状況も把握するため、関連文献等を調査し、読み込むことで、より多角的な視点から研究内容の充実をはかることにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記したように、具体的な事例の分析として判例研究を行い、研究成果としての公表も行っている。ただ、それはあくまで複合的消費者役務提供契約の法理の一場面の分析にしかすぎないので、上記区分(2)の評価にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は複合的消費者役務提供契約を検討対象としていることから、特に「役務提供」に関わる契約、そして、当該契約が他の契約と結合しているような場面について、より詳細な分析を行うことにしたい。さらに、消費者法、とりわけわが国では消費者契約法の改正も行われていることから、そうした法状況の分析にも務めることにしたい。海外の法状況については、今後もドイツ・ハンブルクにあるマックス・プランク外国私法及び国際私法研究所での資料調査を行う予定である。国内文献に加えて、外国文献をも網羅する電子データベースを通じて、国内外からの議論の整理を試みることにしたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 2018年9月にドイツへの海外出張を予定していたところ、同年9月に大型台風が渡航前日に大阪を直撃し、関西国際空港からの渡航が不可能になり、結果、渡航日程の変更および短縮を余儀なくされてしまったため。 (使用計画) 主として、日本民法・消費者法関係図書・ドイツ法関係図書・EU私法関係図書の購入にあてる予定である。この他にも、PC周辺機器等の消耗品購入に加えて、上記(今後の推進方策)記載のドイツでの資料調査を目的とした外国旅費にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)