2019 Fiscal Year Research-status Report
複合的消費者役務提供契約における解消法理とその現代的機能に関する研究
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18K01378
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
寺川 永 関西大学, 法学部, 教授 (50360045)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合契約 / 消費者契約 / 役務提供契約 / 民法 / 解消法理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度では、本研究のテーマである複合的消費者役務提供契約における解消法理について、引き続き国内外の文献の読み込み等による分析を行いながら、研究内容の公表を行ってきた。 まず、判例研究として最判平成5年10月19日民集47巻8号5061頁の分析を行い、公表した(雑誌論文1)。これは、「役務」を提供する請負契約に関するものであり、注文者の承諾のない一括下請負が行われた事案において、出来形部分の所有権の帰属について注文者と元請負人との間でなされた特約の効力が下請負人にも及び、注文者が出来形部分の所有権を取得するとした最高裁判決である。請負契約は民法典に定める典型契約のひとつであり、消費者契約と捉えることはできない。しかし、元請契約と下請契約という二つの契約が連鎖することで「下請負」が形成され、現象面から捉えれば「複合契約」の一場面として捉えることができる。その意味では、本研究とも深い関連性を有する検討を行うことができた。また、複数の研究者とともに、デジタル・コンテンツ又はデジタル・サービスに関するEU指令、物品売買契約に関するEU指令およびオンライン仲介サービスに関するEU規則の翻訳を試みた(雑誌論文2から5まで)。これらは、必ずしも直接に本研究に関わるものではないが、いずれも「役務」や「解消」にかかる研究をすすめるにあたって有益な示唆となり得た。最後に、消費者法に関する書籍において「複合契約と消費者」の執筆を担当した(図書1)。これは、版を重ねるにあたって、その後の展開をアップデートしたものであり、複合契約が消費者との関係でどのような問題が生じることになるのかを再確認することができた。 総じて、昨年度と比べて、決して多くはないものの多角的な方面から本研究のテーマについて取り組むことができたといえる。次年度はよりいっそう幅広い観点から研究内容の充実をはかることにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記したように、具体的な事例の分析として判例研究を行い、EU指令および規則の翻訳を行うなど、精力的に行っている。これらの業績から、さらに複合的消費者役務提供契約の法理についてさらに深化させる必要がある。したがって、上記区分(2)の評価にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は複合的消費者役務提供契約を検討対象としている。2019年度は特に「役務提供」に関わる契約、そして、当該契約が他の契約と結合しているような場面について、より詳細な分析を行うこととしたが、今後は「解消法理」に焦点をあわせて、精力的に研究を継続していきたい。また、わが国では、債権関係にかかわる改正民法が2020年4月1日に施行されたところ、そうした法改正の動きや消費者法、とりわけわが国では消費者契約法の改正も行われていることから、そうした法状況の分析にも務めることにしたい。海外の法状況については、今後もドイツ・ハンブルクにあるマックス・プランク外国私法及び国際私法研究所での資料調査を行う予定であるが、新型コロナウィルスの影響により現地での調査は難しいかもしれない。国内文献に加えて、外国文献をも網羅する電子データベースを通じて、国内外からの議論の整理を試みることにしたい。
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Remarks |
2020年2月18日に、関西大学法学研究所で開催された第151回特別研究会「日韓消費者法ミニセミナー:民法改正と消費者法」で「複数契約の解除 ―改正で実現されなかった論点」との題目で研究発表を行った。
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Research Products
(5 results)