2019 Fiscal Year Research-status Report
Modernization of Japanese Civil Code and CISG
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18K01379
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 到史子 関西学院大学, 司法研究科, 准教授 (30289029)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際物品売買契約に関する国連条約(CISG) / CISG / 民法改正法(債権関係) / グローバルスタンダード / 国際商事仲裁 / 契約法の現代化 / 契約法の比較法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、CISGの世界的権威であるIngeborg Schwenzer教授を日本に迎え、2か月に亘り、CISGを始めとする世界の現代契約法と国際商事仲裁について共同研究を行った。同教授は、世界で最も有名なCISGの注釈書や、数十か国の売買法を比較するGlobal Sales and Contract Lawの編者であり、CISG諮問機関Advisory Councilの議長を長年務める。さらにPracticionerとして国際商事仲裁にも詳しい。今回の来日を契機とする日本の研究者・実務家・企業との一連の講演会や研究会での非常に興味深い議論を通して、CISGを巡る世界の最新の状況と国際商事仲裁の現状について、多角的な視点から検討を深めることができ、理論や実務における問題点を洗い出し、研究の今後の方向性も見出すことができた。 本研究課題において、同教授の招聘・共同研究は、上述の①CISG及び現代契約法の世界の最新の状況の確認、②欧米の比較法研究者の目から見た日本民法の位置づけ・評価を知り、さらに③比較法の前提となるCISGのルール構築における国際商事仲裁の影響についての多角的な知見を得ることを目的とする。そのために、京都大学での「契約不適合責任」講演会、国際商取引法学会での講演「国際商事契約における不可抗力免責とハードシップ」、大阪弁護士会・日本仲裁人協会共催講演「仲裁とウィーン売買条約」、また東京大学での講演「国際商事契約における仲裁」、早稲田大学講演会「CISGの先進性」(その他、北大・関学・神大でも講演会等)を開催した。また同志社大学では仲裁人役として「公開模擬仲裁実践」も行い(香港大学Reyes教授も参加)、CISGを軸とする比較法と、商事仲裁等の実務の観点の二つの方向から、多彩な参加者を加えて、CISGに関する特に重要なテーマについて有意義な意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の2年目に入り、検討をできるだけ正確なものとするために、Schwenzer教授と日本の研究者・弁護士・企業担当者も加え、理論と実務の両面から検討の方向性の再確認をした。講演会や意見交換会等を重ねながら、今まで気が付かなかった観点や世界の契約法の最新の理論的・実務的・社会的状況を数々発見できたことは、本研究課題に関しても余りある成果を生み出した。特に研究の方向性にも関わる「実務における理論研究へのニーズ」を知るに及び、国際取引社会における世界共通のこれからの契約法の在り方、実務に直結・貢献する「理論研究」の今後の発展の方向に鑑みれば、CISGと日本民法改正法との二者比較に止まらず、CISGを中心軸とする日本改正法と世界の契約法との実践的で緻密な比較の必要性を実感することになった。更に今回の講演会を契機に始まった実務家らとの研究会においても、世界の契約法の現代化の検討は日々世界の第一線で活躍する企業等にとっても喫緊の課題で、「実務に直結する研究の重要性・必要性」は一層明確になった(実はこれが世界の契約法学者が現実に目指していることでもあった)。その意味で、本研究課題はかかる社会のニーズにも応えられるよう一部修正をしながら検討することにはなるが、その全体の研究過程の第一段階として「CISGと日本民法改正法の正確な比較」は重要であることには変わりはない。引き続いて当初計画を維持しながら、将来的に必要となる研究全体の最初のスタートとしても有効な意味のある研究となるよう、全体的な位置づけを確認しながらより発展的な研究に繋げるべく、当初研究計画の微調整を図れば十分対応可能と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、「グローバルスタンダードとしてのCISG」に対して「日本民法改正法」を位置付けることにあるが、それは現代化された日本の契約法が世界の契約法の中でその先進性を発揮しモデル法となることができるのか、すなわち世界の社会経済活動において、日本の新契約法がその先進的な内容からスタンダードとなることができるのかを検証するところにある。しかしそのためには、日本の新契約法がCISGをはじめ世界の契約法の中でどのような位置づけにあるのかを明らかにする必要があり、それはCISGとの比較に止まらず、CISGを軸に世界の契約法との相対・全体比較―グローバル化する世界の実際の国際取引の円滑化に直接影響を及ぼす、現代契約法としての日本民法改正法の位置づけの可視化・明確化―が必要であることが今までの検討から分かってきた。 現在弁護士や企業と共同研究する中で、国際取引における実務の「準拠法選択」のために必要な情報を提供するというニーズを踏まえて、世界の現代契約法を比較する方向で検討を始めている。一方では、実務家との検討会から実務で問題となる問題局面の洗い出し、どの分野のどのような問題に対する比較検討が必要なのかを踏まえる(ここでは、CISGに直接規定されていないテーマが問題となることがわかってきた)。もう一方では、日本の契約法の位置づけを明らかにするためには、CISGを軸にして、日本民法改正法と、一方では欧米契約法、他方ではアジア契約法等との偏差を相対的にとりながら、実際の運用も含めた比較法をする視点を加えてきている(仲裁の要素も加味)。 日本の位置づけを正確にするためには、これらの変数は最初から考慮しておかなければならないことが判明したために、まずは第一段階として、日本法とCISGとの比較をする場合にも、ある程度これらの変数を念頭に同時並行的に進行させつつ、検討を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
社会情勢の影響で、海外出張が延期になったため。 ドイツマックスプランク比較法研究所出張旅費として、使用する予定。
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