2020 Fiscal Year Research-status Report
Modernization of Japanese Civil Code and CISG
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18K01379
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 到史子 関西学院大学, 司法研究科, 准教授 (30289029)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本民法改正法 / CISG / グローバルスタンダード / モデル法 / 契約法の現代化 / 比較法 / 国際物品売買法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず昨年度に行ったSchwenzer教授との共同研究の成果(①CISGや世界の現代契約法の最新状況の確認、②比較法学者から見た日本民法の位置づけ・評価、③CISGのルール構築における国際商事仲裁の影響)を踏まえて、CISGを巡る世界の契約法の最新状況、及び国際商事仲裁の現状を本研究に生かすべく、洗い出された理論や実務における問題点から、研究内容の方向性を再度大きな枠組みから捉え直す作業を行った。 当初計画では、CISGをモデル法として、既定値として設定することを前提に、それとの比較で、日本民法改正法の先進性を検証することを予定していた。ところが、当初から、CISGも1980年に発効してから40年が経過し、世界で判決例が積み重なっていることから、CISGの最新状況を判例や仲裁判断の分析を通して確認することは予定していたものの、CISGの先進性自体、ヨーロッパなど世界各国が既にCISGをモデルに現代化を果たしている現在、世界の契約法の中で、相対化する必要があることがわかってきた。すなわち「現代化された日本の契約法が、世界の契約法の中でその先進性を発揮しモデル法となることができるのか」を検証するためには、日本の新契約法が、CISGをはじめとする世界の契約法の中でどのような位置づけにあるのかを明らかにする必要があり、それはCISGとの比較を出発点としつつも、「CISGを軸とする世界の契約法との相対・全体比較」の視点があってこそ、「グローバル化する世界の実際の国際取引の円滑化に直接影響を及ぼす、現代契約法としての日本民法改正法の位置づけの可視化・明確化」ができると考えられる。 そこで本年度は、この研究計画自体を、その全体枠組みの中で発展的に位置づけ直すことの検討・確認作業を行い、全体研究の第1段階として日本民法改正法とCISGとの比較法を行うとの位置づけを明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は上述の修正を踏まえて、本研究の前提となる全体計画の中での本研究の位置づけを明らかにするための準備作業を行い、全体計画を明確にして次の科研費の計画を立案しその方向で体制を整えた。もっとも、本年度は最終年度であったにも拘わらず、コロナの影響で、①ドイツへの出張を延期し調査・共同研究を中断せざるを得ず、また②仲裁の現状調査についても同様に延期せざるを得なかった。③日本民法改正法とCISGの比較の「相対化・全体比較」のためのアジア法との比較法研究体制も、名古屋大学と実務との共同による構想が、どの国から比較法を始めるかの具体化の途中で、一時中断せざるを得ない状況となった。 従って本年度は、国内で入手できる各種資料を利用して、CISGの判例や文献などを用いて、最新の理論状況を条文ごとに把握する作業を行うと共に、全体計画策定の中での本研究の方向性の若干の修正と、全体計画に適う準備として、(a)取上げる重要問題点の洗い出し=重点化(メリハリつけ)と拡張(境界領域―契約締結上の過失・デジタルコンテンツやライセンス契約・損害賠償の予定等―テーマ追加の確認)、(b)CISGと日本以外の主要な法圏との比較法(全体との相対化)の構造の確認(大陸法、英米法のUCC、アジア法のシンガポールなど英米法圏・社会主義法圏・イスラム法圏)、(c)アジア法研究の体制構築(名古屋大学法整備支援・大阪大学外国語学部・アジア法学会―関大・JAIKA―と実務の共同)、(d)欧米契約法の比較法・仲裁調査の体制確認(マックスプランク研究所・Schwenzer教授との共同研究体制の構築・継続)を行うに止まらざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
全体構想が、本研究の枠を大きく超えることが見込まれるために別に新しく、全体の大枠の研究計画を立てることとし(参照、令和3年基盤研究(C)一般「CISGを中心軸とする世界の契約法の現代化の現状分析―ポストCISGに向けて」 課題番号21K01263)、上述5のように、この全体構想の中の第1段階として、CISGとの比較による日本の契約法の位置づけを、世界全体の契約法との相対比較の中で明らかにする方向に修正した。すなわち、CISGを軸にして、日本民法改正法と、一方では欧米契約法、他方ではアジア契約法などとの偏差を相対的にとりながら、実際の運用も含めた比較法をする視点(これに商事仲裁の要素が入る)をもちつつ、まずは、CISGと日本民法改正法の比較法を、欧米・アジアとの比較も視野に入れながら、検討する予定である。また上述7で述べたように、Schwenzer教授・実務家との検討会から、ポストCISGに向けて、また実務で問題となる問題局面の洗い出しの結果、どの分野のどのような問題に対する比較検討が必要なのかをも踏まえて、扱うテーマの重点を考慮して(境界領域の検討も含ませて)検討する予定である。 また当面は、①既に現在入手している資料で調査を継続するが、②必要な調査・共同研究は、対面とZoom等のオンライン双方により、コロナの状況を見ながら柔軟に組み合わせて検討する予定である。もっとも、実際に懇談して共同研究する中で出てくる成果も見込まれることから、直接面会せず、また赴かずにオンラインで行うことには、一定の限界も予想される。限られた状況の中で、一層の工夫や試行錯誤をしていくことになると思われる。
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Causes of Carryover |
当初計画では、調査・共同研究の初めの段階は、直接会って懇談・相談する必要があったため延期・中断をしていたが、状況がなかなか好転しないため、「Withコロナ」として、今後は対策を十分とりつつ、対面とZoomの両方を使い分けて再開することにした。 マックスプランク研究所・Schwenzer教授等、海外調査を含めた調査・共同研究の延期・中断のため、計画を大幅に変更することになったことから、次年度に予算の使用もずれ込んだが、今後はコロナの状況を見ながら、できる範囲で当初計画案に沿って、最終年度の計画通りに運用する予定である。 やむを得ない変更が必要となる点については、幸いなことに、本研究計画を第1段階として、発展拡大させた研究計画が科研費(上述8基盤研究(C)「CISGを中心軸とする世界の契約法の現代化の現状分析―ポストCISGに向けて」 21K01263)で採択されたことから、計画のそちらへの移行も考慮におく予定である。
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