2019 Fiscal Year Research-status Report
自営創作者のための著作権法試論―フランス法からの示唆
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18K01383
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
長塚 真琴 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (10281875)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス著作権法 / 日本法との比較 / 権利制限規定 / データマイニング / ベルヌ条約 / ヴィクトル・ユゴーと著作権 / 著作権集中管理団体 / 著作権に関する契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)2019年度前半は、同年3月にパリとリヨンに出張した際に入手した資料や情報の整理に充てた。また、5月にトゥールーズ・キャピトル大学より研究者6名が来日し、本研究とは別のプロジェクトとして、AIと知的財産法・競争法に関する研究会を一橋大学で開催した。その際には、本研究のテーマに関しても聴き取り調査をおこなった。 (2)中盤は、フランスの専門雑誌「知的所有権」への寄稿を準備した。これは、3月に編集委員長のアンドレ・リュカ名誉教授より要請されていたものである。寄稿は「日本からの手紙―著作権法の2018年と今後の改正」として、2019年10月号に掲載された。また、9月にはチェコのプラハで開催された国際著作権法学会(ALAI)の年次研究大会に参加した。テーマは著作権や著作隣接権の集中管理団体をめぐる法律問題であり、本研究とも関わりの深い発表や議論がなされた。 (3)後半は、11月から12月にかけて、上記(1)の別プロジェクトのためにポワティエとトゥールーズに出張し、上記(2)の仏語寄稿をもとに、それぞれ発表をおこなった。また、昨年に引き続き、11月に国立音楽大学で講義した。本年度は20世紀後半以降の国際条約の推移に重点を移したが、ヴィクトル・ユゴーや19世紀フランスの著作権集中管理団体がベルヌ条約創設に果たした役割にも触れた。 12月にはALAI会長のフランク・ゴッツェン名誉教授(ベルギーのルーヴァン・カトリック大学)を、一橋大学の学内資金で招聘し、新しい欧州著作権指令に関するALAI Japan特別研究会を開催した。新指令のうち本研究と関係の深い「著作権に関する契約」条項について質問し、有益な情報を得ることができた。 (4)終盤は、校務や博士論文指導、研究代表者の負傷のため、研究はほとんど進展しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AIと知的財産法・競争法に関する別プロジェクトや、ALAI Japanの理事(事務局も担当)としての業務に、予想以上の時間を割くこととなった。 また、勤務先では前年度に引き続き、大学院の教務担当という重要な役職に就き、諸般の事情により、専門外の博士論文の審査を担当することとなった。また、大学院教務の2年目委員として、学部の運営協議会に出席し、学部の意思決定にも関与することとなった。 7月までは労働組合の委員長としての任務もあり、10月末から年度末にかけての学長選挙にも、委員長経験者として深く関与した。 さらに、1月に外傷を負ってからは、入通院やリハビリにも多くの時間がとられた。 以上より、研究時間を確保することが困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
負傷は治癒し、学内業務の負担も2020年度は多少改善する。 新型コロナウィルス流行のため渡航は困難であるが、通常は高額なフランス法データベースが無料開放されて得た文献もあった。以下に例を挙げるものをはじめとするいくつかのトピックに関して、文献中心の研究を進めたい。 1つは、2019年12月のゴッツェン教授来日を契機に知ることとなった、欧州新著作権指令における「著作権契約」条項である。これは著作者と著作物利用者の間の力の不均衡を是正するもので、フランス法の考え方が色濃く現れている。 もう1つは、2020年1月22日に、元フランス国立図書館長のブルーノ・ラシーヌが、文化大臣フランク・リースターに提出した、『著作者と創作行為』に関するレポートである。同レポートは特に漫画分野に重点を置いていると報じられており、やりたいことではなく仕事としての創作行為、著作者支援はぜいたくではないことなど、本研究の問題意識と重なることが書かれているようである。
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Causes of Carryover |
購読しているフランスの雑誌に発行の遅れがあり、年度内に購入できなかった。そのために次年度使用額が発生した。この額は、当初の予定通り、雑誌の購入に充てる。
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Research Products
(4 results)