2019 Fiscal Year Research-status Report
知的財産権侵害に対する救済制度の研究-交渉促進規範としての救済法という観点から-
Project/Area Number |
18K01384
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
愛知 靖之 京都大学, 法学研究科, 教授 (40362553)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 知的財産権 / 救済 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、著作権法に明文の規定のある譲渡権の消尽(26条の2第2項)以外の支分権について消尽が認められ、差止請求・損害賠償請求等が否定されることがあり得るのか(譲渡以外の利用行為に対して消尽の適用があり得るのかを)検討し、成果を公表した。譲渡権以外の著作権について「消尽」という理論構成を用意することは、既存の権利制限規定には該当しないものの、実質的にみて侵害とすべきでない利用行為について、無理なく権利行使を否定するための新たな手段を提供することにもなる。検討の結果得られた結論は、(1)第1譲渡の際に、著作物の原作品・複製物(著作物が化体した有体物)の用途・特性に照らして、想定されるその後の著作物利用が一般的なものである場合及び想定される著作物利用が限定的なものであっても価格差別が可能な場合、あるいは、(2)「事後的な著作権行使・事前の対価上乗せ」以外の対価取得手段が残されている場合、この(1)(2)のいずれかに該当する場合に限って、消尽を認めてよいのではないかというものである。 そのほか、外国語サイト等における標章の使用やコスチュームの使用・貸与等に対して不正競争防止法2条1項1号・2号に基づく差止請求等が行われた事案について、差止請求の可否及び範囲について批判的な検討を行った。また、出願時同効材と均等論第5要件に関する最高裁判決について行った考察なども、知的財産権侵害に対する救済に関連する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
知的財産権侵害に対する救済制度を考えるうえで近時重要となっている事案を分析するという当初の目的をおおよそ達成することができ、成果の公表を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、民事的救済(差止請求権・損害賠償請求権・不当利得返還請求権など)及び刑事罰という救済制度全体を横断的・総合的に分析し、当事者間の交渉を最大限促進させるために救済法をどのように活用すべきかを考察する。
|
Causes of Carryover |
今年度予定していた国内出張のうち、調整が付かずやむなく断念したものがあった。 今年度に引き続き、本研究課題に関連する文献・資料の購入を進める。また、学会や研究会等に参加し実務家と交流することで、本研究目的の達成に必要不可欠と成る実務的知見を獲得するとともに、研究成果の報告や意見交換を通して、本研究課題に関する議論を深め る。そのための旅費を支出する。
|