2019 Fiscal Year Research-status Report
公法と私法の観点を総合した、インターネット上の表現活動への法的規律枠組の探求
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18K01385
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
毛利 透 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (60219962)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インターネット / 表現の自由 / 匿名性 / プロバイダ責任 / ヘイトスピーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、本研究課題とは別のテーマで日本公法学会の総会報告を行うことになったため、そのための準備に時間をとられ、当初の研究計画の変更を余儀なくされた。ドイツの最新の雑誌や文献の収集は続けたが、それらを十分検討することはできなかった。 ただ、年度末に、主な検討対象としているドイツのNetzwerkdurchsetzungsgesetzの執行を担当する連邦司法庁を現地で調査することができたことは、大きな収穫だった。実際に質問してみなければわからない、法律執行の現実を知ることができ、また法改正の動きについても詳しい知見を得ることができた。現在の同法は、しばしば報道されるところとは異なり、SNSに違法表現の削除義務を厳しく課すことよりも、むしろ報告書の公表によって自主的な削除を促進することを主たるねらいとしている。現在、あるSNSの報告書が法律の要件を満たしているかどうかが争われており、その背景について知ることができたのは収穫だった。ただし、法改正が実現すれば、SNSに対する国家の関与が強まり、法律の性格が大きく変化することが予想されるため、今後も注視していきたい。 また、2019年度には、インターネット上の言論が引き起こす法律問題を扱っておられる弁護士の方2人に直接お話を聞くこともできた。これにより、ネット上でのヘイトスピーチへの対処の困難さや、特定人を多数の者が一斉に攻撃するというネットの特性への法的対処が求められていることなど、研究を進める上で非常に有意義な問題意識をもつことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、2019年度には本研究課題に費やす時間を減らすことを余儀なくされたが、公法学会報告の終了後には、ドイツでの現地調査を実現するなど挽回の努力を行い、2020年度以降の本格的な論文執筆への準備を進めることはできたと考える。また、ネット上の表現をめぐる現実の事件についての知見を広めることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度にも資料収集を続けつつ、2年間の研究をふまえて、論文執筆を視野に入れて研究を濃縮していきたい。また、現在、ネット上での表現活動が世論の分極化を招くのかどうかが社会学上の大きな論争点となっているようであり、この点はネット上の言論規制を考えるうえでも重要な問題なので、実際に研究者に尋ねるなどして知見を深めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度は、別テーマで日本公法学会総会報告を行うことになり、本研究課題の研究を進められない期間があった。そのため、資料収集などが少々遅れることになった。学会報告終了後は本研究課題に改めて重点的に取り組んでいるので、繰越した額も使い、論文執筆に向けて研究をどんどん推進・深化させていくつもりである。
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