2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative and empirical study of legal and bioethical governance of medical research
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18K01386
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丸山 英二 神戸大学, 法学研究科, 名誉教授 (10030636)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人対象医学系指針 / 臨床研究法 / 再生医療法 / インフォームド・コンセント / 偶発的所見 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,米国のコモン・ルール改訂後の動きを睨みながらも,研究の焦点は,臨床研究法と再生医療法を中心として,わが国の医学研究に適用される多様な規制ルールの関係について理解を深めることにあてた。 2017年5月の一部改正「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(医学系指針)の施行,17年4月の臨床研究法の制定,18年2月の同施行規則の公布,同規則の内容を踏まえた18年11月の再生医療法施行規則の改正があり,治験に適用される臨床試験の実施の基準(GCP)も含めると,研究内容による適用ルールが多様化している。同時に,形式が異なっても,内容の共通化の動きも見られる。たとえば,臨床研究法施行規則第9条の臨床研究の基本理念は医学系指針の目的及び基本方針と同じであるし,同様の基本理念は18年改正の再生医療法施行規則においても取り込まれた。 他方,インフォームド・コンセントにおける説明事項については,医学系指針では明記されている偶発的所見や将来の研究利用に関する説明が,臨床研究法施行規則案の段階では掲げられていたところが,公布規則ではなくなっていた。しかし,同時発出の課長通知では研究計画書の記載事項として掲げられ,とくに将来の研究利用については対象者に対する説明同意事項のところに置かれていた。その後の改正再生医療法施行規則では両者とも説明事項に収められていた。また,メーカーからの研究資金提供を受ける研究については,臨床研究法9条が資金提供契約の内容の説明を求めるが,これについて臨床研究法施行規則では言及がない。他方,改正再生医療法施行規則は説明を求めている。このように,曲折はみられるものの,視野を広くとると,現在改訂中のゲノム指針が医学系指針との整合性を図る方向で作業が進められていることも併せて,内容共通化の動きは大きな潮流をなしていることが把握された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.近年におけるわが国の医学研究ガバナンスにおいて,治験に適用される臨床試験の実施の基準(GCP)や人対象医学系指針にまさる注目を集めている臨床研究法と再生医療法について,施行規則や施行課長通知も含めて検討し,その特徴・問題点を把握できた。 2.人医学系指針,GCP,臨床研究法,再生医療法について解説する講師を務め,フロアから頂戴した質問に答えるとともに,意見交換を通して自身も学ぶことができた。とくに,日本医事法学会総会において,それらを総覧し特徴を解説する報告をすることができ,かつ内容を活字化する機会を得た。 3.医学系学会に積極的に参加し,それを通して,医学研究の実情や医学研究に関する法令・指針が研究現場に及ぼしている影響について情報を収集できた。 4.改訂中のゲノム指針の改訂作業について資料を収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね,2018年度の研究活動を継続させる。なお,【研究実績の概要】欄で書いた説明項目の取扱いは些末にも見えるが,偶発的所見については欧米でも議論が活発に続けられており,また,将来の研究利用に関しては,米国におけるコモン・ルール改正の作業過程で大きく動いたブロード・コンセントの要否・許容に関わるもので,それぞれ重要性は高く,今後は,これらを中心に,同様の問題をめぐる海外の推移も注目し,わが国の動きが,海外の動きと共通するところがないかを検討したうえ,わが国の動きを評価・検討することを進め,よりよいあり方の提言につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 年度末の旅費および物品費について,支出の見通しを正確に予測できなかったため,わずかではあるが,平成30年度の使用額が予算額より少なくなりました。 (使用計画) 次年度使用額は4,883円という比較的少額のものであるため,平成31年度における研究の実施のために活用したいと思います。
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Remarks |
研究代表者が行った学会報告,講演,講義などで用いたパワーポイントファイルをPDFにして公表している。
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Research Products
(4 results)