2020 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ弁護士職業法と憲法秩序――我が国弁護士職業法を支える憲法的価値
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18K01392
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
森 勇 中央大学, その他部局等, 客員研究員 (30166350)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 弁護士の職業像 / 連邦憲法裁判所 / 連邦弁護士法 / 独立の一機関 / バスティーユ裁判 / 連邦通常裁判所 / 弁護士賠償責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、一方では過去の研究期間における活動により取得・蓄積した知見を踏まえて、研究の目途である弁護士職業法に関係するドイツ「憲法裁判所の判例」の解析に注力した。ドイツ弁護士職業法は、1987年に連邦憲法裁判所が下した、「バスティーユ裁判と呼ばれるふたつの決定によりその根底を揺さぶられ、これを契機としてリーガルマーケットに対応する進化を遂げてきたとされている。しかし、それまで連邦憲法裁判所は弁護士の職業像ついてなんら重要な判断を示していなかったのか。素朴な疑問から、2020年度は、弁護士の職業像について、連邦憲法裁判所がどのような図絵を描いてきたのかを探求することとした。そのために、まずは現在のドイツの弁護士法の成立史を追い、そこに定められている弁護士の地位がどのような背景のもとで成立したかを確定した。その上で、バスティーユ裁判までの弁護士の職業像に関わる連邦憲法裁判所の裁判例を俯瞰し、それが今に連なっていることを確認した。 これに加え、連邦通常裁判所判事でMarkus Gehrlein博士に抽出していただいた、弁護士賠償責任をめぐる重要な裁判例(前年度分も加え)15件を翻訳し、資料として公表した。 フィールドワークに関しては、COVID-19の影響で、対面のものは、予定していたドイツ最上級裁判官のインタビューなどすべて実施できなかった。しかし、情報収集・意見交換の機会であるドイツ弁護士協会主催のドイツ弁護士大会の一部のシンポジウム、セミナー、そしてそれに先行して行われたDAV Int.Bar LeadersSymposiumにオンラインで加わり情報をえた。また、協力機関ケルン大学弁護士法研究所とベルリン大学弁護士法研究所が開催したウェビナー参加した。テーマは、直近に迫る弁護士法とそれを取り巻く諸法の改正であり、その中心は弁護士社団法制の大幅な改革である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の報告書において述べたとおり、ドイツ弁護士職業法関連の連邦憲法裁判所をその中核とするドイツ最上級裁判所の裁判例は質量とも膨大であり、そのうち2020年度に取り上げ分析できたものは数件に止まらざるをえなかった。申請にかかる事業期間にすべてを取り上げていくのはもはや不可能であるので、研究者の問題関心にそう裁判例を選択の上で、分析・研究を進めていくことしていくが、これは当初の計画に照らせば、遅れていると評価せざるをえないので、「遅れている」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究者の研究手法は、ドイツ一次文献をふまえ、ドイツサイドの研究協力者との対話そしてまた弁護士職業法に関わる最上級裁判所裁判官ないしは弁護士法の権威とされる弁護士との面談をつうじて、たとえばある連邦憲法裁判所の裁判のバックグラウンド・背景情報を取得し、それをふまえて当該裁判の意義を解明するというものである。2020年度においては、COVID-19のため、国外における対面をともなう活動はすべて見送らざるをえなかったことから、2020年度に研究対象とした裁判例については、2019年の在外研究滞在の際に取得した情報に依拠してその分析なりを進めることができたが、2021年度ないしはそれ以降については、こうした情報が入手できていない。2021年度は、最終研究機関となるので、まずこの点に注力していきたい。 本年度具体的な取り組みの対象としては、フォルクスワーゲングループのディーゼルエンジン排ガス不正操作に関する内部調査報告書の押収に端を発した連邦憲法裁判所の裁判、そして、最上級裁判所の裁判例をベースに、弁護士の基本的義務の一つである「事に即していること」(連邦弁護士法43条a3項)について分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究者の支出計画によれば、資金の多くは、研究者の国外での活動と国外研究者の招聘野本でのシンポないしはセミナーに宛てられることになっている。しかし、COVID-19の影響により、それらがすべて不可能になり、支出の機会ががほとんどなかったことから、次年度使用が生じた次第である。 COVID-19の一応の収束を待って、先送りとなっている研究者の国外出張および外国人研究者の招聘計画の立案と実行を積極的に推進し、未使用部分をその費用にあてていきたい。
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