2023 Fiscal Year Annual Research Report
German Rule for Lawyers and Federal Constitution
Project/Area Number |
18K01392
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
森 勇 中央大学, 日本比較法研究所, 客員研究員 (30166350)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成功謝礼 / 連邦憲法裁判所 / ライヒスゲリヒト / 連邦通常裁判所 / 弁護士法 / 連邦弁護士法 / quota litis / 弁護士報酬法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、弁護士の成功報酬に関するドイツの規律について、その1878年の弁護士法(Rechtsanwaltsordnung)から現在に至るまでの展開を弁護士像と憲法秩序との観点から分析した。 わが国では現在特段問題視されてはいないが、ヨーロッパでは最近まで原則禁であり、現在でもドイツでは「原則」禁止されている。理由は弁護士のあるべき姿=弁護士像である。弁護士は司法の一員として、依頼者から独立していなくてはならないが、成果如何に収入を依存させる成功報酬は、依頼者との共同戦線となり、これに反する。またより多くの報酬を得るために弁護士がその真実義務に反してでも勝訴したいとの誘惑にかられる。これらの義務違反の危険をはらむ成功報酬は認めるべきではない。これがドイツの出発点である。 ドイツ成功報酬禁止の歴史は複雑である。1878年の弁護士法には成功報酬禁止規定はなかったが、裁判例は例外はあるとしつつも、ほぼ全面的に成功報酬は弁護士像に反しその合意は公序に反し無効だとしてきた。連邦弁護士法下でも基本この状況が続いたが、バスティーユ裁判に触発された1994年の大改正にあたり、成功報酬全面禁止する規定が設けられた。 しかし2006年連邦憲法裁判所は、全面禁止は違憲だとして改正を求めた。全面禁止は司法へのアクセスを閉ざし法治国家に逆行する。その意味で、基本権である職業実践の自由を不当に制限するというのが理由である。なされた改正は限定的なものだったが近時さらに緩和された。その理由の一つはドイツ特有とも思われるサービーサーとの競争関係である。 上記の研究成果を公表後訴訟ファイナンスとの取り組みを開始した。司法へのアクセスを支えるという点では、成功報酬と機能は共通するが、問題の所在は異なる。早晩わが国でもその是非等めぐる議論が始まるはずだが、その問題点等を整理しておくことは有益と考える。
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