2019 Fiscal Year Research-status Report
捜査機関によるコンピュータ・データ取得の情報法および国際法上の課題に関する研究
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18K01393
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小向 太郎 日本大学, 危機管理学部, 教授 (30780316)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際法 / 個人情報保護 / プライバシー / 執行管轄権 / 強制捜査 / サイバー犯罪条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、犯罪捜査機関が行うコンピュータ・データの取得について、法制度上の課題を検討するものである。被疑者に関連するコンピュータ・データは、現在では主要な捜査対象の一つである。対象となるデータの種類も多岐にわたる。被疑者に直接関わるものだけでも、電子メールに関する記録、被疑者の通信やオンライン・サービスの利用記録、被疑者が自身のコンピュータやクラウド上に保存している電子ファイル等がある。さらに、現在では、携帯電話端末や自動車の位置情報、CCTV(監視カメラ等)やドライブレコーダの記録、IoT(Internet of Things)技術によって収集される情報等の被疑者が意識しないうちに収集される情報も、大量に蓄積保存されている。こうした情報も、犯罪捜査の対象となりうる。 これらの情報を取得することは、被疑者のプライバシーや個人情報保護の観点から問題となる場合があり得る。また、ネットワーク上の情報の多くは、国外に保存されている。国外に保存されたデータに対する捜査は、国際法上の問題を生じる場合も多い。このような捜査における法的な問題について、我が国と欧米の制度や運用を比較分析し、制度のあり方に指針を示すことを目的とする。 2019年度は、前年度に行った論点抽出と法令概要の調査を踏まえ、特に被疑者に関する情報を保有しているIT企業などの第三者に対する捜査に焦点を当てて、制度と実際の運用の動向について調査を行った。法令や文献の調査をさらに詳細に行うとともに、米国西海岸の主要IT企業、ネットメディア企業、ITベンチャー等を訪問し、保有情報に関する考え方について調査を行うとともに、情報化と個人情報保護に関する研究を行っている有識者を訪問してディスカッションを行った。その成果を踏まえ、学会での報告や議論を重ね、各国と我が国の制度整備や法適用の状況の比較・分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、①捜査機関による情報取得に関する問題点を抽出し、②問題となる日本法上の位置づけと課題を整理し、③米国およびEUにおける対応法令の概要を調査した。特に越境データ捜査に関する国際法および情報法上の課題については、①国家主権の侵害との関係、②捜査対象者の人権保障との関係、③越境データ移転規制との関係、④国際捜査共助の可能性について、ある程度論点を網羅的に整理して提示することができ、内外の学会・国際会議での発表や論文・書籍の公表を行うことができた。 2019年度は、前年度に行った論点抽出と法令概要の調査を踏まえ、特に被疑者に関する情報を保有しているIT企業などの第三者に対する捜査に焦点を当てて、制度と実際の運用の動向について調査を行った。法令や文献の調査をさらに詳細に行うとともに、米国西海岸の主要IT企業、ネットメディア企業、ITベンチャー等を訪問し、保有情報に関する考え方について調査を行うとともに、情報化と個人情報保護に関する研究を行っている有識者を訪問してディスカッションを行った。その成果を踏まえ、学会での報告や議論を重ね、各国と我が国の制度整備や法適用の状況の比較・分析を行った。 2019年度の具体的な成果としては、まず、日本におけるインターネット上のデータ保護制度を網羅的に検討した論文("Data Protection in the Internet: Japanese National Report")をまとめ、書籍(共著)としても出版されている("Data Protection in the Internet" )。また、特に犯罪捜査に置いて重要性が高く、プライバシーに関する議論も活発な位置情報について、欧州、米国、日本の制度動向を学会報告にまとめている(「犯罪捜査における位置情報の取得とプライバシー」)。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、2019年度までの成果を踏まえ、国内外の調査をさらに進め、特に米国および欧州諸国におけるコンピュータデータへの犯罪捜査に関する制度及び運用をさらに調査する。特に、欧州においては、犯罪捜査と個人情報保護のバランスに関する調査が進んでいる。EU一般データ保護規則や現在導入が検討されているeプライバシー規則等のデータ保護規則に加え、犯罪捜査指令(DIRECTIVE (EU) 2016/68)の具体的な運用と議論に重点を置いて調査を行う。さらに、IoT技術やCCTVによって収集される情報にも対象を広げ、コンピュータ・データに対する捜査のあり方をできるだけ網羅的に検討する。 欧米の動向調査については、情報処理国際連合のカンファレンスでの情報収集を行うとともに、さらに実態調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響で会議の中止や国外訪問調査が困難となっているため、文献やオンラインでの調査を継続しつつ、さらに広く情報収集を行う方法を検討する。 上記研究の成果をもとに、①国外所在のデータに対する捜査、②第三者が保有する被疑者に関するデータに対する捜査、③犯罪捜査と個人情報保護制度の関係、について体系的な論文にまとめることを目指す。
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Causes of Carryover |
2019年度は、米国のIT企業等における情報の取り扱いに関する調査に注力したため、欧州の調査が十分にできなかった。2020年度は、国際会議参加および実態調査について訪問先を拡大して実施をする予定である。ただし、新型コロナウィルスの関係で国外調査等は困難が予測されるため、その代替として調査委託等についても検討する。
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Research Products
(4 results)