2019 Fiscal Year Research-status Report
自動走行の自動車における個人情報・プライバシーの保護の法的検討
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18K01396
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Research Institution | Institute of Information Security |
Principal Investigator |
湯淺 墾道 情報セキュリティ大学院大学, その他の研究科, 教授 (60389400)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自動運転 / プライバシー / AI / 個人情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究実施計画に沿って研究を進めたが、特に個人情報とプライバシーの保護に関する法的問題の研究に注力した。 現時点での各国の個人情報保護やプライバシー保護法制は、原則として生存する個人を保護の対象としているが、大量に収集される個人情報やプライバシーに関するデータを本人の死後も利活用してよいかという問題が浮上してきており、その中には人格権的なものと財産権的なものがあるため、各国の規制状況もまちまちとなっている。2019年度はそれらについての研究も行った。死者の権利に関する原則は、英米法系と大陸法系とで異なる。アメリカでは、現時点では統一的な連邦法が存在しないため、州法によって規制されているが、コモン・ローにより保護する州、制定法により保護する州などまちまちであり、パブリシティの権利に含める場合や生存する遺族の権利の中に含める場合などがあることが明らかになった。しかしEUにおいては、人権としてのプライバシーを死者にまで拡大することには総じて消極的であり、GDPRの規制対象は、原則として生存する個人に限定されることになり、死亡者の識別につながるデータおよび死亡者の識別につながり得るデータは、いずれもGDPR上の個人データには該当しない。他方で同条は「構成国は、死亡した者の個人データの処理に関する規定を定めることができる」とも規定している。このため、各加盟国が独自に死者の個人情報の取扱について規制することを妨げないことになり、「加盟国が死亡者の個人データの処理に関する規制を導入する可能性を完全に否定しさるものではない」と理解されているため、死者の個人データに関する法整備を行っている国もあることが明らかになった。また各国における自動運転の自動車の開発及びその法的規制状況、自動運転技術を利用する無人タクシーの実用化と法的規制状況についての調査を引き続き行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に沿って、おおむね順調に研究を進めている。また研究成果についても、論文、学会発表などの形式によって順次公開している。 ただし、2019年度の年度末から、世界的に新型コロナウィルスの感染が拡大し、海外出張が困難になったり国内出張の自粛が求められたりするような状況になったため、ヒアリング調査を中止せざるを得なくなるという状況も生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、各国における自動運転の自動車の開発及びその法的規制状況、自動運転技術を利用する無人タクシーの実用化と法的規制状況についての研究に重点を置くこととする。 特に無人タクシーについては、世界的に新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、人的接触を避けることができる点が注目されており、普及が加速する可能性がある。このため、各国における法的規制の動向、プライバシー保護との両立などについての研究を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる感染拡大により、出張して参加することを予定していた研究会やヒアリングを行うことができなくなり、旅費の使用計画に大幅な変更が生じた。また研究計画も一部変更する必要が生じたので、全般的に研究費の使用を次年度に繰り越さざるを得なくなった。
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Research Products
(10 results)