2019 Fiscal Year Research-status Report
選挙制度改革と政治制度改革のインパクトの理論的・実証的研究
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18K01405
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
川人 貞史 帝京大学, 法学部, 教授 (10133688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 定数配分 / 比例代表制 / アダムズ方式 / サント・ラグ方式 / 選挙区間の人口較差 |
Outline of Annual Research Achievements |
①衆議院議員定数の都道府県への配分方法の分析 2016年の衆議院議員選挙区画定審議会設置法改正よってアダムズ方式が採用されるまで選挙法に明記されることがなかった衆議院議員定数の都道府県への比例配分の諸方式を明らかにする研究を進めた.そのために,帝国議会,枢密院,国会などの会議録に記されたそれぞれの選挙制度の制定経過から定数配分の方法を特定し,法案作成時に用いられた当時の人口統計に照らし合わせて,それぞれの法律で定められた附録や別表における選挙区と議員数と同じ結果が得られるかを検証した.1889年から1947年までのすべての選挙法制定経過をたどり,実際に行われたであろう定数配分の作業を検証することによって,日本における議員定数の配分にどのような比例代表制の方式が用いられたかを明らかにした.そうすることで,1994年の政治改革関連諸法においてなぜ衆議院の小選挙区定数の配分方法としてヘア式最大剰余法が明記されることなく採用されたかということも明らかにした.以上の分析結果を論文としてまとめた. ②都道府県への定数配分に用いられる比例代表制の諸方式と選挙区人口の較差の分析 都道府県への定数配分には,これまでドント方式(1889年),サント・ラグ方式(1900~1947年),1人別枠方式+ヘア式最大剰余法(1994年),アダムズ方式(2016年)が用いられたことを明らかにしたが,これらの方式が理論的にどの程度の選挙区間の人口較差をもたらすかの分析を進めた.都道府県内の選挙区割りが完全に均等に行われるとしたときの選挙区間の人口較差は,現在の日本の都道府県の人口を前提とすると,アダムズ方式が1.66倍で最も小さく,ドント方式が1.95倍で最も大きい.その理由を各方式の人口較差の最大値を理論的に分析することで明らかにする分析を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の欄に記述したことに加えて,記述しなかった研究作業として,比較議院内閣制の研究の一環としてアメリカ政治学会およびアメリカ連邦議会調査を実施することができた. 概して,研究作業としては充実した1年だったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,最終年度として研究のとりまとめ作業を行う. 具体的には,研究実績の②で記述した比例代表制の諸方式と選挙区の人口較差の理論的考察に関する論文を執筆する. 次いで,1889年から現在までの選挙区割りの実際が人口較差の理論値からどの程度解離する結果になっているかを測定する.都道府県内の選挙区割りは,従来から地勢,交通,行政区画を総合的に考慮して行うことになっているが,そうした考慮がどれだけ人口較差を拡大しているかについて分析する. 最終的に,これらの分析を単著としてまとめる作業を進めて,研究期間中に一定のめどを立てたい.
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Causes of Carryover |
昨年度からの繰越額が若干多かったために,今年度配分額をあわせた金額をすべて使用するに至らなかった.来年度において,すべて使用する予定である. ただし,新型コロナウィルスの全世界的な感染拡大のために海外の研究大会への参加および議会調査の実施が困難である可能性があるので心配している.
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Research Products
(1 results)