2022 Fiscal Year Annual Research Report
Welfare states that shaped European party politics: A comparative analysis of the feedback effects in 20th-Century Europe and Japan
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18K01406
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 洋平 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90242065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 光生 中央大学, 法学部, 准教授 (50645752)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 政党政治 / フィードバック / 西ヨーロッパ / 日本 / 近接比較 / 政治史 / 比較政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度後半以降、新型コロナの感染拡大のため、西欧現地での史料の収集ができず、作業は停滞を強いられたが、2022年秋の水際措置の緩和を受けて、漸く本年度末、フランスに関する史料調査を実施できた。 過去に収集した史資料と併せると、主たる事例となるフランスについては歴史過程の実証分析を行うに概ね足りる水準に達したため、他の三カ国の(主に文献・資料に基づく)事例分析と併せて、報告書に纏める作業を今後進めていきたい。 史料調査が予定よりも著しく制約された反面、研究期間が延長されたことも手伝い、全体として、予定したよりも幅広い事例(社会保障の様々な制度)について文献・資料調査と比較分析を行うことができた。フィードバックが確認できる事例を積み重ねることでしか説得力を獲得できない本研究にとっては、怪我の功名となったと言えよう。 研究期間全体としては、まず①日欧諸国の社会保障の諸制度における管理機構の実態把握と類型化を行った。鍵は官僚制と労使や共済組合などの間の管理権限の配分である。その上で②フランスについて、20世紀を通じて、並立する様々な社会保険の制度に官僚制の統制力が徐々に浸透し、福祉国家全体が官僚統制の下に置かれて、労使などの組織やこれを基盤とする主要政党に官僚制化が進展していく過程を史料に基づいて明らかにした。最後に③仏英日以外では、管理権限の配分が異なる社会保障制度が併存し、ベクトルの異なるフィードバック効果が交叉する状態が20世紀を通じて続いたことを明らかにし、2つのパターンの分岐がなぜ起こるのか、理論的な考察を行った。 本研究は、社会保障制度のフィードバック効果に関する政治史研究の知見を体系化することで、今日、喫緊の課題となっている社会保障改革が、政党を始めとする政治のあり方に大きなインパクトを持つことに注意を促し、その歴史的実例を意識した上で政策決定に臨むよう導く意義を持つ。
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