2020 Fiscal Year Research-status Report
Social Investment Policy, Economic Performance, and Welfare States: Growth, Employment, and Equality
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18K01415
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
坂本 隆幸 北九州市立大学, 法学部, 教授 (10298557)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会投資政策 / 教育政策 / 家族支援政策 / 労働市場政策 / 経済成長 / 所得分配 / 貧困 / 連帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、欧州連合 (EU) を中心に先進諸国で近年、重要政策に掲げられている「社会投資政策 (social investment policy)」が、 政府が期待するような 社会経済効果を実際に生むのか、いかなる効果を持っているのかを、理論的、実証的に明らかにすることである。同政策の起源や発展過程についてはこれまで研究されているが、同政策の効果、影響についてはまだほとんど研究、解明されていない。本研究は、日本を含めた先進20か国における (1) 社会投資政策の性質・規模と (2) 経済成長・雇用・非正規雇用・所得格差・生産性との間の関係を、計量的・定性的に分析し明らかにする。先進諸国政府は、同政策が人的資本投資を促すことによって、① 知識集約的な新しい経済や技術革新に適応できる、高技能な労働者を養成し、② 経済成長を確保するだけでなく、③ 労働者の失業、世帯の所得格差の問題を緩和し、④ ひとり親家庭、非正規雇用、教育格差などの新しい社会リスクも軽減する、ことを期待している。
本年度は、データ分析を進め、分析結果を3本の研究論文にまとめ、学術誌に投稿した。1本は、社会投資政策と所得分配の不平等の関係について、2本目は同政策とシングルマザーの雇用率の関係について、3本目は同政策と貧困率について分析したものだ。1本目はJournal of European Social Policyに掲載が決まった。この研究結果はthe Midwest Political Science Associationでも発表された。残りの2本は現在加筆修正中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ分析が進み、良好な結果が得られ、結果は3本の論文にまとめられた。1本は学術誌の掲載が決まり、他の2本は加筆修正中である。本研究はおおむね良好に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
社会投資政策によって、経済成長・雇用・経済格差の緩和などの社会経済的結果を達成できるか否かを明らかにすることは、低経済成長・緊縮財政・脱工業化などの厳しい経済環境下で市民の生活を守らなければならない先進諸国にとって、極めて重要な課題である。今年度までで、経済成長、所得の不平等、貧困、シングルマザーの雇用率について研究を進めたが、まだ解明しなければいけないことは多く残っており、それらの分析を進めることが重要である。 まず第1に、現在、社会投資政策がシングルマザーの貧困率を抑制できるのか否かの分析を進めている。育児休暇手当が再分配前の貧困率を下げることが判明していてそれは理論的に予想されたとおりなのだが、教育支出が再分配後の貧困率を抑制するという結果が出ている。この結果自体はいいことなのだが、なぜ再分配前でなく後の貧困率に効果があるのか説明が容易でない。この結果はロバストであり、分析に誤謬があるということは考えにくい。また、同様の結果が勤労世帯全体の分析結果にも出ている。このことの理論的説明を進めることが重要な課題である。 第2に、社会投資政策が非正規雇用にいかなる影響を与えるのかの初期的分析を行ったのだが、これも理論的に説明がつきにくい結果が出ている。非正規雇用の規定要因はこれまで研究されておらず、先行研究がないため容易ではないが、この分析も精力的に進めていかなければならない。 雇用の拡大や格差の緩和も社会投資政策の目標の一部なので、同政策に効果があるか否かを明らかにすることは重要である。これらの分析をスピード感を持って進める。分析結果が出次第、学会で発表し、批評やコメントを得て、研究の質を確保する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、現地調査と国際学会発表がキャンセルになったため。
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Research Products
(2 results)