2018 Fiscal Year Research-status Report
有権者を動かすのは理性か感情か-候補者評価と情報取得の実験的研究
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18K01425
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中村 悦大 愛知学院大学, 総合政策学部, 准教授 (10432783)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 投票行動 / 投票実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では、①アイトラッカーによる情報取得の実験と②VFX等のコンピューターを利用した実験刺激の作成と実験の実施の二つを研究の柱としていた。このうち、本年は①のアイトラッカーによる情報取得の実験を中心に研究を進めた。具体的には、愛知県長久手市の選挙公報を例に、有権者がどのように公報を読むかをアイトラッカーにより分析し、International Political Science Associationおよび日本政治学会において報告した。ただし、両報告ともまだ試行段階ということもあり、相対的に安価なアイトラッカーによる視線の分析をデモンストレーションし、技術状況を共有することを目的としたものとなった。具体的には、画面やヘッドマウントディスプレイに公報を掲示し、その公報に対する視線の動きを検討することにより、有権者が候補者のバックグラウンドを見るのか、政策を見るのかという視線の動き、さらに注視している時間と候補者への好感度などの分析を通じて、有権者がどのような情報を取得し、どのような候補者を選択しているのかを明らかにすることを試みた。この結果は、試行的な研究ではあったが、候補者の公報に対しての注視時間等の指標は候補者への好感と相関しており、このアイトラッカーでの分析にある程度の妥当性があることも示された。これらの実験の概要と結果に関しては愛知学院大学総合研究所報「政策科学」に論文として掲載した。 また、②のVFX等の技術を利用した実験に関しては、これまで進めていた研究をまとめた論文が公共選択学会学会誌「公共選択」へと掲載された。また、音声変換を利用しての実験に関しても予定通り公開講座において高年齢層を対象とした実験を行い、その結果を愛知学院大学総合政策学研究所報「政策科学」に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は①アイトラッカーによる情報取得の実験に関しては研究計画を前倒しし、2つの学会報告及び論文発表を行った。また②のVFX等を利用した論文も学会誌および大学付属研究所所報に公表することができた。このため、進捗状況は当初計画以上に進捗していると言える。 一方で、ヘッドマウントディスプレイ型のアイトラッカーに関して、昨年度発売される予定であった高精度な機材が、現在、理由が不明ながら日本発売が遅れている状況にあり、想定していた準備が行えない状況にある。そのため、来年度以降の進捗状況に問題が出る可能性もあり、楽観的とは言えない。このような不安要因があるため、最高の評価でもなく、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
①の情報取得の研究に関しては、昨年度の経験からHMDタイプの実験を継続することとする。申請書には4月の統一地方選挙を目標にフィールド実験を行うとしたが、前述のように高精度の機材の発売が遅れており、実施できないことが確実である。したがって、フィールド実験による視線の分析に関しては来年度以降に回すことも視野に、今年度は実験室実験を中心としてアイトラッキングの経験を積むことを続けたい。具体的な課題としてはHMDタイプのアイトラッカーは視野角が狭いという問題があるため、位置や頭の移動を行って実験素材を見るということを可能にするなどの工夫をソフトウェア上で行う必要がある。このような改善を行っていく。 また、統一地方選でのフィールド実験を断念しても、参院選においてフィールド実験を行うことも可能である。特に詳細を記入することは現時点では研究の情報秘匿のためにできないが②の映像技術等を用いた実験室実験について、フィールド実験との組み合わせを計画中である。こちらは着実に行いたい。 研究成果の報告に関しては9月にすでに学会での報告を決定している。また各種雑誌での論文をの発表を行っていく。
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Causes of Carryover |
高精度のアイトラッカー付きヘッドマウントディスプレイStarVR、Xtal、Hololens2などの発売が2018年度後半に行われるということであったが実際には日本発売は2019年度以降にずれ込んだため。
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