2021 Fiscal Year Research-status Report
国家緊急権とデモクラシー:ワイマール共和国における大統領緊急権の実像
Project/Area Number |
18K01429
|
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 教授 (30374177)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 国家緊急権 / ドイツ政治思想史 / ワイマール共和国 / ワイマール憲法48条 / フーゴー・プロイス / カール・シュミット / 国際法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヴァイマル憲法48条のライヒ大統領の非常権限の問題を、ヴァイマル末期から逆照射するのではなく、フーゴー・プロイスや制憲議会議員の目線から、同時代知識人との横の関係をも視野に入れて、内在的かつ立体的に解明することを目指す本研究の一環として、プロイスとカール・シュミットの48条論を比較して分析した、2020年秋の日本政治学会における報告をブラシュアップし、日本政治学会の学会誌への投稿論文として取り纏め、査読を経て掲載された。 本稿では、国家論において対照的な立場にある両者が、48条論については、48条2項の第1文と第2文の整合的な解釈の仕方や48条5項の施行法制定の必要性など、結果的に平仄の合う部分を見せる一方、緊急命令権の濫用や48条4項の州政府の独裁権の濫用については態度が分かれるなど、それぞれの立場を互いに影響を与え合うような形で修正していった経緯を解明すると同時に、このことは、非常事態に対する法的規制の難しさを改めて浮き彫りするものであることを指摘した。本稿の知見は、非常事態とデモクラシーという、現下の時代状況とも密接に関連する、より広いコンテクストにおいても、重要な示唆となりうるものである。 さらに、フーゴー・プロイスの国際法論について、論文として取り纏める準備をすすめた他、『法学部における学びの視点』(ぎょうせい)や『愛媛における立憲主義と民主主義をめぐる学際的研究―憲法学、行政法学、政治学の観点から―』(松山大学総合研究所)といった共著図書の執筆も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本政治学会の学会誌への投稿論文を取り纏め、査読を経て、無事に掲載された。 他方、ドイツ・コブレンツの連邦公文書館における調査の計画は、今年もコロナの影響で渡航できず、翌年度に持ち越さざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
諸邦委員会における議事内容確認のため、ドイツ・コブレンツの連邦公文書館における調査を実施したいと考えている。これら研究成果を総括し、本研究の取り纏めを行いたい。
|
Causes of Carryover |
ドイツ・コブレンツの連邦公文書館における資料調査を予定していたが、コロナ禍で国外出張が不可能となり、持ち越さざるを得なくなったため。
|