2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K01431
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
遠山 隆淑 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系人文グループ, 准教授 (60363305)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 内閣 / バジョット / ウィッグ / イギリス国制 / 政治的決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ヴィクトリア期ウィッグの政治思想の中でも、議院内閣制論や内閣に関する分析そのものに切り込み、後世の内閣論等に多大な影響を与えたW・バジョットのThe English Constitution(1872)の全体の翻訳作業(邦題『イギリス国制論』)ならびに、同書の初版(1867年)を構成し、同書の内容を議会改革論(1867年の選挙法改正論)として同時代的に解釈する際にきわめて重要なテキストとなる論考‘A Simple Plan of Reform’(1864)の翻訳作業を行った。また、『イギリス国制論』は、たとえば当時流行した牛疫や孤児院他における「投票チャリティー」方式など、現代の日本でそのまま読んでも理解が難しい具体的な情報がふんだんに盛り込まれたきわめて時代性の強い内容を有しているため、その他同書で言及されている数多くの人物などの説明も含め、詳しい訳注を作成した。以上の作業で、『イギリス国制論』全体の翻訳を完成させることができた。 以上の作業を進めていく中で、ヴィクトリア期のウィッグが政治的決定方法として重要視した妥協について、バジョットが『イギリス国制論』で評価していた具体的な政治状況が、ウィッグ政権単独で行うような性格のものではなかったこと、つまり、バジョットは、単に同書執筆直前のパーマストン政権だけではなく、野党保守党との「パーマストン・ダービー連合」を高く評価したのだということに政治的妥協論の観点から気づくことができたことは、本研究全体の今後の長期的な遂行にとってきわめて有意義な発見だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バジョット『イギリス国制論』他の翻訳作業ならびに訳注の作成に多くの時間を割くことになり、バジョット以外のウィッグの知識人や政治家の内閣論の分析にあまり進めなかった。また、コロナ禍での遠隔授業などの対応でエフォートが大幅に下がった。
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Strategy for Future Research Activity |
The Edinburgh Reviewの蒐集ならびに分析を中心に、バジョット以外のウィッグの知識人や政治家の内閣論やイギリス国制をめぐる議論の分析を進めて、同テーマに関する論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
特にコロナ禍の影響によって、本研究の中で主要な作業となっている定期刊行物所蔵機関への文献調査と文献複写を行うことができなかったため。また、同じ影響によって、本研究のエフォートが下がって、書籍を中心とした物品の購入をあまり行えなかったため。
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