2022 Fiscal Year Annual Research Report
History of Political Thought on Cabinet: Focusing on Victorian age
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18K01431
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
遠山 隆淑 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系人文グループ, 准教授 (60363305)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バジョット / イギリス国制論 / 議院内閣制 / 内閣 / 妥協 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2018年度後期以降一貫して取り組んできたW・バジョットの主著The English Constitution(1872年)ならびに同書の初版に収められたバジョットの選挙法改正論(「簡明な選挙法改正法案(A Simple Plan For Reform)」)の全訳を完成させて、『イギリス国制論』というタイトルで上下二巻本で岩波文庫より出版した(上巻:2023年3月、下巻2023年5月)。また、下巻の末尾に掲載する、同書全体にかんする訳者解説を執筆した。同時に、同書の読解に必要だと考える歴史的事項について詳細な訳注を作成した。バジョットは同書で、三権分立論や混合政体論という従来のイギリス国制理解を批判して、内閣を行政府と立法府を連結させるイギリス国制の中核的な機関として論じたが、これにより同書は議院内閣制論(のちに「ウェストミンスター・モデル」として説明されるようになった)の出発点に位置づけられる古典である。政治学あるいは政治思想史上ではじめて、議会や官庁などと関連付けながら、内閣を政治体制(国制)全体のかなめに位置づけた同書を、訳者解説だけでなく訳注での説明も含め、政治思想史やイギリス近代史などの近年の研究成果をふまえて、またバジョットが同書を執筆する最大の動機となった選挙法改正(1867年)との関連を強調しながら新たに訳出して多くの読者の目に触れる可能性の高い岩波文庫から出版したことは、今後の我が国における一般的な議院内閣制理解の進展にとって大いに意義のあることである。
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