2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01435
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中北 浩爾 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30272412)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 連立政権 / ポスト55年体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に関わる主たる研究成果は、『自公政権とは何か』の刊行である。本書は、連立政権論という政治学の分析視角に基づき、ポスト55年体制期の日本政治を、自公政権を中心に分析したものである。ヨーロッパ大陸諸国の比例代表制の下での連立政権とは異なり、小選挙区比例代表並立制の下での日本の連立政権は、選挙協力が鍵を握り、二ブロック型の多党制になることを理論的に示した上で、選挙協力と政策調整システムの二つに着目して分析を行った。理論的な検討だけでなく、数量的なデータとインタビューを交えて分析した点にも特色がある。既に多くの書評で好意的に取り上げられ、自公政権を語る上で参照される一冊になっている。 また、すでに発表した本ではあるが、中公新書の『自民党―「一強」の実像』の英語版がイギリスのRoutledge社から出版された。この中でも自民党と公明党の関係が取り上げられているため、関連する研究成果として示すことができる。Stephen Johnson氏(オックスフォード大学博士)とともに翻訳を進めたが、かなり膨大な作業量であった。 『自公政権とは何か』に続き、野党のサイドの分析着手した。その際、注目しているのは日本共産党である。習作として執筆したのが、「冷戦後ヨーロッパの左翼政党」である。この論文は、Luke March教授の分析を紹介しながら、日本共産党の研究に若干の示唆を与えるものとして書かれた。本論文を基盤に、今後研究を発展させていきたい。 さらに、「地域からのポピュリズム」という橋下徹大阪府知事・市長が率いた大阪維新の会、小池百合子東京都知事が実質的に設立した都民ファーストの会を分析する論文を執筆した。本論文は、自公政権の強靭さを逆の視角から明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はポスト55年体制期の日本の連立政権を実態と理論の両面から明らかにするものであるが、その概要を上記の『自公政権とは何か』の中で示すことができた。二年目にして概ね当初の目的を達成することができたと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次なる本研究の課題は、現在の日本の野党についての分析である。とりわけ、これまで研究が皆無であった日本共産党についての分析を進めようと考えている。安保法制反対運動以来、同党は野党共闘を方針とし、旧民進党およびその後継政党と選挙協力を実施し、日本政治に大きなインパクトを与えている。冷戦終焉後の共産党の変容を国際比較の観点から分析するとともに、日本共産党が歴史的に形成してきた方針を跡付け、現在の野党共闘路線を評価することは、自公政権に代わりうる連立の枠組みの有無、すなわち政権交代の可能性を考える上で避けて通れない。政治評論的な分析に流されることなく、国際比較と歴史の両面から研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2019年度は著書の執筆などに注力をした結果、十分なインタビューや資料収集が行えなかったため次年度使用額が生じた。それら次年度使用額は、インタビューの実施やテープ起こしのための謝金、資料収集のための物品費や複写費として2020年度に使用する予定である。
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[Book] 水島治郎,古賀光生,今井貴子,野田昌吾,土倉莞爾,伊藤武,作内由子,田口 晃,中山洋平,西山隆行,中北浩爾2020
Author(s)
ポピュリズムという挑戦
Total Pages
334(284-312)
Publisher
岩波書店
ISBN
987-4-00-061393-4
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