2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K01435
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中北 浩爾 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30272412)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 連立政権 / ポスト55年体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1993年に55年体制が終わった後、今日に至る日本政治を政党間の連合・連立政権という視角から分析するものである。 2021年度は、日本共産党の分析に努めた。1999年に始まる自公政権に対抗する形で2015年の安保法制反対運動を契機として、共産党を含む野党共闘がスタートした。衆議院の小選挙区比例代表制並立制の下、二大政党ブロック化が進展したという意味を持つ。しかし、自公ブロックに比べて野党ブロックは、様々な点で限界がある。その原因を探るべく、ほとんど研究がなされてこなかった共産党に関する分析を進めた。古書を購入したり、機関紙誌を複写して読み込んだり、選挙や政治資金などに関するデータを集めたりといった作業を行った上で、執筆を進めた結果、2022年5月に中公新書の一冊として『日本共産党』というタイトルの書物を出版する目途を得るに至った。 この書物は以下の通り、大きくいって国際比較、歴史、現状分析の三つの部分から構成される。「序章=国際比較のなかの日本共産党、第1章=大日本帝国下の結党と弾圧、第2章=戦後の合法化から武装闘争へ、第3章=宮本路線と躍進の時代、第4章=停滞と孤立からの脱却を求めて、終章=日本共産党と日本政治の今後」である。2021年の衆院選で共産党は政権交代を訴えたが、立憲民主党とも連合政権に関する合意はできず、選挙協力も深いものにならなかった。国際比較も交えつつ、この状況を打開するためには、本格的な路線転換が不可欠という結論を得た。 これに加えて、日本社会党のブレーンであった高木郁朗教授のオーラルヒストリ―として『戦後革新の墓碑銘』を刊行することができた。1970年代の野党連合政権論など、本研究とも大きな接点を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1993年に55年体制が終わった後、今日に至る日本政治を政党間の連合・連立政権という視角から分析するものである。 事前に準備を入念に行っていたことから、2019年には『自公政権とは何か』(ちくま新書)という書物を出版することができた。ポスト55年体制期の連立政権で唯一安定した枠組みになっている自公政権を分析し、緊密な選挙協力と政策調整の仕組みの二つが原因であるという結論を得た。先の衆院選の党首討論で公明党の山口那津男代表が言及するなど、学界のみならず政界でも幅広い賛意を得る説になっていると思われる。なお、新書という形態ではあるが、学術論文のなかでも参照されることが多いことを付言しておきたい。 同書の出版後は、野党ブロックの分析に移り、主に日本共産党の研究を進めてきた。その成果の上に立って、2022年5月に『日本共産党』(中公新書)を刊行する予定である。 上記の理由から、本研究は「おおむね順調に進展している」と結論づけることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は概ね二つの内容の研究を進めていきたいと考えている。 第一に、5月に刊行される『日本共産党』に対しては様々な批判がなされることが想定されるため、必要な反論を行いつつ、妥当な指摘については受け入れ、研究を深化させていくことである。場合によっては、追加的な論文を執筆し、公刊することを考えている。政治学は学者だけのものではなく、得られた知見を広く社会に還元する必要がある以上、日本で政権交代可能性をどう再構築していくかという問題について、議論を通じて積極的に貢献していきたい。 第二に、これまでの研究を踏まえつつ、より幅広い次の研究課題を構想していくことである。この点については具体的には全くの白紙であるが、本研究の連合・連立政権という視角から戦後の日本政治史を再構築していく作業などが考えられる。通史の執筆という研究代表者の長年の懸案もあり、様々な可能性を探りつつ、前向きに検討を重ねていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、2021年度もコロナウィルスの蔓延によって出張を行うことがほとんどできなかった。その結果としてインタビューや資料収集が十分に行えなかったほか、研究会や学会がオンライン開催となった分旅費の支出がなくなったため次年度使用額が生じた。それらは、2022年度に調査および成果報告のための研究会や学会参加のための旅費、収集した資料の整理のための謝金、として使用予定である。
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